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午時葵の吸血鬼  作者: うつのうつ
午時葵の八咫烏
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厄介ごとのにおい

 パートナー契約を結ぶことになった。のだがパートナーとは何なのだろうか?

 捕食者である人間の上位種が下位種の人間とパートナーとは笑える話である。

 これをパートナー契約とでも言うのは少し違う気がするがそういうことになっている。

 少なくとも表向きは。

 さて、明石葵にとって俺はパートナーなのだろうか?

 それとも程のいい食事対象?

 あるいは非常食?

 少なくとも表向きはパートナーだろう。

 彼女が本心、どう思っているのか、俺にはわからない。

 それにしても大学は随分と人が多い。

 いや、この大学は異常なのだろう。

 マンモス大学とまでは言わないが、かなりの学生数を誇る大学だ。

 学部学科は多彩で、無茶苦茶な人数の学生が毎年入学してくる。

 そしてお昼ご飯の時間になると、学生達はこぞって昼飯を買いに行く。

 校内の学食、大学の前の商店街の飲食店街、学食のパートのおばちゃん達が学食のキッチンで作った弁当を大学内で販売する格安弁当。

 中でも人気なのは安くては大学正門から徒歩数十秒の場所にある弁当屋さん。

 その弁当屋さんはご飯の上に甘辛いタレと絡ませた肉を乗せてさらにキムチにネギが乗っている。

 俺もその店に行こうかと思ったのだが時既に遅し。講義が少し長引いてしまった。

 もう既に学食も満席、パートのおばちゃんが販売する格安弁当も売り切れ、

 最終的に講義を受けていた教室から一番遠い人気の正門前の弁当屋に来たものの行列が出来上がってる。

 これはもはや昼飯争奪戦争と言っても過言ではない。

 そして昼飯争奪戦争に勝利するのは、講義が早めに終わる文系学生達。

 講義が長引く理系学生には辛い。

 

「阿部くん何やってるの?」

「うぉぉ!」

 いきなり吸血鬼に話しかけられて驚いた。

 まさか明石さん、昼飯争奪戦争に負けたからと言って俺を食べる気なんじゃ。

「何か馬鹿みたいな想像を膨らませているみたいね。大丈夫よ食べないから」

 眼が紅く染まってる。俺の思考を読んだのか。

「お昼ご飯で困ってるでしょ? 一緒にどう?」

「この辺りに学生は来ない可能性の高い喫茶店があるのよ。一緒に行かない?」

「ありがたい話だ。ついて行くでもそんな場所よく知ってるな」

「その場所、大学の教授とかも利用するのよ。だから立ち振る舞いには気をつけてね」

「なるほど、遠いのか?」

「すぐそこよ」

 明石葵曰く、徒歩20秒くらいで到着するらしい。

 たいして歩くこともなく到着した。

「喫茶店って感じ」

 それも寂れた、いや寂れかけた喫茶店という感じ。

「そうよ、入りましょう」

「いらっしゃいませ。二名様ですね空いてるお席にどうぞ」

 扉を開けた瞬間中から店員さんの声が聞こえてきた。

 とりあえず適当な席に座る。

「早く選びましょう。私は学生定食にするわ。阿部くんは?」

 と明石さんはメニューを渡してきた。

「俺も同じ学生定食で」

「注文お願いします」

 明石さんが手を上げて店員さんを呼ぶ。

「お決まりでしょうか?」

「学生定食2人分でお願いします。それとこれ学生証です」

 明石さんは学生証を店員に見せた。

 俺も明石さんの真似をして学生証を見せる。

「ありがとうございます。飲み物はどうなさいますか?」

「飲み物は結構です」

「僕も結構です」

「承知いたしました」

 そう言い残して店員さんは厨房へと去って行く。

「このお店、この辺りじゃかなりの老舗の喫茶店なのよ」

「あぁ、それで」

 なるほど確かにあそこの席に座ってる人はこの大学の准教授だ。

「だからあまり失言はしないこと、成績に響くわよ」

 小声で言われた。

「確かに危険だな」

 小声で答えておいた。

「お待たせしました」

 注文した料理を持ってきた店員さんに声をかけられた。

 えっ? もうできたの?

「御用の際はお呼びください」

 そう言って厨房へと去って行った。

「なんと言うか、注文から料理が届くまで早かった気がするんですけど」

「そりゃ学生のお昼ご飯の時間帯だもの、早くて安くてそこそこ美味しい料理を提供するっていうのもこの辺りでの飲食店の必須スキルよ」

「なんか大変そうだな、でもなんで俺に声をかけたんだ?」

「1人でお昼ご飯どうしようって悩んでいそうだったからよ。それともう一つある。2人で話がしたいの今度あなたの家に行っていいかしら」

 なるほど、例のパートナー契約のことか。

「時間作るよ。講義で出された課題も片付けないといけないし」

「そうじゃあ、今週の土日はどう?」

「日曜日ならなんとかなると思う」

「それじゃあその日で」

 パートナー契約を結んでまだ一週間も経っていないのにいきなり厄介ごととはついてない。

 さてどんな厄介ごとを持ってくるのやら。

 いや、彼女から見ればもしかしたら。もしかしたらなのだけれど、こうして人間と日常生活を送っていることでさえ厄介ごとで非日常なのかもしれない。

 そうして迎えた約束の日曜日。

「ねぇ、インキュバスってもちろんしってるわよね?」

 一人暮らしの俺の家に来た彼女からの質問はその一言だった。


皆さんこんにちは。

作者のうつのうつです。

久しぶりに投稿します。

ほかの作品作ったり、なろうにアップしたりしてたので投稿遅れました。

というよりこの作品の書き溜めの残弾ゼロでございます。

次話投稿はしばらく時間かかるかもしれません。申し訳ありません。

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