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午時葵の吸血鬼  作者: うつのうつ
午時葵の八咫烏
28/37

吾輩は猫である、、、

 吾輩は猫である、、、

 名前はまだない、、、

 それにしても、現実とは金である。

 何をするにも金である。

 金、金である。

 吾輩は猫である!!!

 嘘ではないのである!!!

 ここから先の物語に、、、と!!!より上が噓などというこざかしい細工などと存在しないのである!!!

 !マークを3つも付け説得力があるのである!!!

 何でもないのである!!!

 なにやら女性たちが話をしている。

 女三人よれば姦しいという言葉を聞いたことがある。

 今、目の前には二人の女性しかいない。

 今、目の前で行われているやり取りを聞くと姦しいとはとても思えない。

「今回の報酬の入金確認したよ」

 税金とか面倒だし高校生だし現金で渡そうかとも思ったけれど。

 と話をしているのは先日、神隠し騒動で俺を二人でハメた女性たちだ。

 目の前でそんなやりとりがされている。

 売られた子牛の気分はこういうものなのである。

「目の前でそんなやり取りされると金で売り飛ばされた気分になるんだけど」

 と抗議してみたものの。

「売り飛ばされた結果、私と恋人関係になれて幸せね」 

 吾輩は猫である、、、

 どうやら先日の神隠し騒動、二人で俺をハメて葵と俺を引き合わせたようである。

 葵気が付いていたらしい。俺と初めて出会った時、いや久しぶりに出会った時に傘を貸してくれた中学生が俺であるということに。

 何がなんやらわからないのである、、、

 タイムパラドックスでもおこりそうなのである。

 もしかしたら、もう起こっているのかもしれない。

 まぁ、起こったところで俺は知ったことではない。

 葵さえ生きていればそれでいいのだから。

 吾輩は猫ではない。鴉である。

 いや鴉ではない。普通の人間である。

 専門家ではない。

 ただの人間だ。

 でも、執念を持った人間だ。


 白瀬さんは専門家だが、専門家とは一体なんなのだろう。

 そう疑問に思ったことがある。


 専門家いう言葉で検索してみたところその意味は、ある特定の学問・事柄を専門に研究・担当して、それに精通している人。

 と出てきた。

 もしそうなら、きっとそれは専門家なのだろう。

 でももし俺のような中途半端な人間でも専門家とは何なのかを語っていいのであれば、それが許されるのであれば、もっと別の言葉で表現する。

 もし表現するのであれば、強いているなれば言うなら、専門家とは特定の分野に執念を燃やし技術として使用する者を専門家とでもいうのだろうか。

 もしそうならば、僕は専門家ではない。

 なにせ怪異やらなんやらに執念なんて持っていない。

 それが必要だったから、手に入れた知識。

 そりゃそうだ。何せ恋人が怪異なのだから。

 恋人の食べる料理にニンニクなんて入れたら殺される。

 ただそれだけの話だ。それはきっと専門家ではない。

 ただのアマチュアだ。

 俺が燃やす執念は一つしかない。

 葵が無事でいてくれたのなら。きっとそれは俺の執念だ。

 だから俺は怪異の専門家ではない。


 吾輩は阿部和久、、、

 なんの変哲もない高校生として人生を送り、それなりの進学校で受験勉強に励んでいる。

 恋人と同じ大学に入学したいからだ。


 吾輩は阿部和久、、、

 恋人の厄介ごとに振り回され、恋人のために普通の人の持っていない知識や技術に詳しくなった人間。


 誰もが嘘をついている。

 誰もが噓をつき、誰も嘘を知らないでいる。

 誰もがその嘘に気づかず。誰もが日常を送っている。

 誰もが嘘ではないことを嘘だと思い込み、あいつは嘘つきだと罵っている。

 愚かで浅はかで情けのない世界、それがこの世界だ。

 そんな愚かな世界を俺は嫌っている。

 そんな愚かな世界を俺は好いている。

 

 

 彼女はいつも窓際の席に座っている。

 いつだって彼女は窓際から外を眺めている。

 彼女の席はいつも窓際だ。

 彼女はいつも窓際の席を希望する。

 彼女は窓から眺める景色が好きだ。

 夏の日差し、秋の落ち葉、冬の雪化粧、同じ窓から外を眺めているだけなのに、全く違う世界を映し出す。

 彼女はそんな窓際の席が好きなんだ。

 生き物とは何なのだろう。人間とは何なのだろう。

 人に何かを与える存在? 人から何かを奪う存在?

 それとも何画を作り出し生活を豊かにする存在?

 人は人を愛する生き物? それとも人は憎み合う生き物?

 彼女にはわからない。わからないにも関わらず、彼女は彼らが羨ましい。もちろん人間が怖く恐ろしい生き物であるということも彼女は経験から知っている。

 人間に酷い目に遭わされたことだって多い。

 その度に彼女は逃げ出し、生きながらえてきた。逃げるたびに仲間を失った。

 彼女は嘘をついている。彼女は嘘をつき、そしてそれを誰も知らないでいる。

 間違いなく誰もが嘘をついているものだ。

 彼女は嘘をついている。

 きっと彼女の友人も嘘をつく。

 誰もが嘘をつき、そして意外に嘘に気づかないのかも知れない。

 彼女は世の中とはそういうものなのだと知っている。

 そして誰もが嘘を知らない。

 誰もが嘘を知らないことさえ知らない。

 この時代には嘘が多い。誰もが嘘を知らないことさえ誰も知らないのだろう。

 俺の恋人は今もそんな時代に生きてくれている。

 

 

 

 吾輩は猫である、、、





 吾輩は鴉である、、、






 吾輩は嘘を知らないでいる、、、






 吾輩は専門家である、、、







 吾輩は専門家である。

 

 

 

 

 

 

 

 吾輩は和久である、、、







 吾輩は和久である。

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