表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
午時葵の吸血鬼  作者: うつのうつ
午時葵の吸血鬼
25/37

午時葵6

皆様こんにちは。

久しぶりの投稿です。

新しく作品を作り始めたのでよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n7700iq/

 せっかく着替えを用意してもらったに少しばかり濡れてしまった。


 他にも着替えを買ってきてくれているらしいので俺はそれに着替えた。


 サイズも教えていないのに、なぜピッタリなのだろう。きっとたまたまだ。


 脱衣所で服を着替えて、花火の時に少し濡れた服を洗濯かごの中に入れて、俺は柊宅のリビングへ移動する。


「着替えて来ましたよー」


 そう言いリビングの中に入ると柊さんが夜ご飯を用意してくれていた。


「有り合わせで作ったけどよかったかしら」


 そう言われて食卓に上がったのは焼きうどんだ。


「味付けも適当だけど、我慢してね」


「いやいや、寝る場所に夜ご飯までいただいて文句なんか言えませんよ。いただきます。」


 そう言って俺は柊さんが用意してくれた食事に手をつける。


「味付けも適当っておっしゃってたけど、美味しいですよ」


「お世辞でも嬉しいわ」


「お世辞じゃないです、、、」


「家に帰れる目処が立つまで作ってあげるわ」


 そう胸を張って言う柊さん。


 そんな彼女を見ながら俺は済ました顔で言う。


「いえ、僕もたまには作らせていただきます。親は共働きなので、遅く帰ってくる時間が遅いんで作

ってたりしてるんです」


「そうなんだ。共働きって大変ね。ん? って言うか、冷静にツッコミ入れさせてもらうんだけど、

共働きで家に両親は居ないのよね。帰りも遅いんでしょ? それで家出に近いって、家にいたところ

で両親と喧嘩しても会ってる時間の方が短いんじゃ? 家出する意味あるの?」


 確かにその疑問は誰でも待つだろう。


 でも言えない、神隠しにあったなんて言ったところで、頭のおかしな高校生を拾ったとしか思われ

ないだろう。


 俺は顔を少し逸らしてそんなことを考えた。


 ありのまま起こったできごとを言うわけにもいかない。


「いや、妹と喧嘩して、、、」


 顔を逸らしている俺を柊さんは見つめて、何か納得したように答える。


「ああ、それで」


「女心って難しいですから」


柊さんはまっすぐ俺を見つめ続けている。


「女心なんて意外に単純なものよ」


「どこが単純なんですか? ややこしいにも程がありますよ。男性の僕には理解不能です」


 事実理解不能だ。恋人は血を吸うし、無理矢理神隠しに遭わさせられるし、カバンの中に入ってい

た手紙は適当な内容しか書かれていないし、帰り方さえ教えてはくれなかった。


「すごく単純じゃない、好きな男の子に愛してるって言われると喜んで、恋人がいないと寂しくて死

んじゃう生き物、食事と睡眠が大好きで、外では化粧をして見栄えをよくしてるけど、家に帰ったら

日曜日のお父さんみたいにグータラして、主食は恋人の休日」


「そもそも主食が恋人の休日って食べ物なんですか?」


「何言ってるの? すごく美味しそうじゃない。あなたも大学生になったら、一人暮らしを始めて仲

のいい恋人ができて、実家から大学に通う恋人があなたが一人暮らししている部屋に遊びにくるの

よ。最初は化粧をして綺麗な女性を演じているかもしれないけど、付き合いが長くなってくると、あ

なたの部屋に入って来た瞬間に目の前でヨレヨレのTシャツに着替えて化粧を落とし始めて、あなた

のベッドの上に大の字に寝転んでこう言うのよ。喉乾いた、お茶。あなたは大の字に寝転んだ恋人に

冷蔵庫から飲み物を取って来てコップに注ぎ恋人に渡すの。どう? 薔薇色の大学生活でしょ?」


「そんな恋愛嫌だ! もっとキラキラ輝いた恋愛がいい!」


「それが現実よ。女の子ってそういうものよ。そう言えば、あなた大学生に進学するの?」


 無情にも恋愛の現実を突きつけた人は俺に進路を聞いて来た。


「一応、進学のつもりなんです。まぁ、今の僕の学力じゃまだ足りないですが」


「文系? 理系?」


「あまり考えてないんですよ。将来なりたい仕事、就きたい仕事ってそんなにイメージわかないって

言うか、学生だとやっぱり働いた経験とかないから想像つかないって言うんですかね。正直に言って

大学生活もあまり想像つかないです」


「何言ってるのよ? 大学生活なんて簡単に想像できるじゃない。文系の大学生は男女の比率は大体

半々くらいだから入学して早々に男子も女子も恋人作りに奔走して、入学半年間くらいで学科の中の

人達はそこら中カップルだらけ、1年も経つと殆どが別れて、その後は別れた男女がまた同じ学科の

中で恋人を作り。最初に別れた男女が新しく付き合い始めたカップルの悪い噂を流しまくっていがみ

合う。そしてまた別れて新しく付き合い始めて歪み合う無限ループよ。人間は学ばないから男は別れ

たら、新しい女性を探して仲良くなって、あの子と付き合えるかも、ワンチャンあるかもって言い始

めるのよ」


 随分と歪んだ学生生活を教えられてしまった。


 この人の大学生のイメージってどんなイメージなんだ?


「ちなみに理系大学生ってどんな感じなんですか?」


 そう聞くと柊さんは胸を張って答えてくれた。


「そんなもの簡単よ! 文系大学生のワンチャンあるは、あの女の子告白したら付き合えるかもって

意味、理系大学生のワンチャンあるは、あの講義の教授は優しいから単位取らせてくれるかもって意

味よ。学科の中に居るのは男ばかり、全体の9割くらい男、どこを見ても男男男。朝から夜まで講義

が行われて、全ての講義で課題が出されて、家に帰っても勉強漬け、専門書漬けの日々。講義が終わ

って次の講義に向かう時に同じ学科の人と歩きながら会話をすると、その人は顔色を真っ白にして、

こう言うの「俺、学校辞めるねん。勉強ついていかれへんから」ってね。」


「そんな大学生活嫌です。それとなんで途中で関西弁が混じってるんですか?」


「そんなに嫌なの? すごく楽しそうな大学生活じゃない。関西弁が混じっているのは原作者の気分

よ」


 この人は随分歪んだ大学生活をイメージしているようだ。


 そしてもう一つ思ったことは。


「原作者の気分って、この世界って小説の世界だったんですか?!」


「その通りよ。そしてあなたは薔薇色の文系大学生生活と知識を深める知的な理系大学生生活を選ぶ

権利を勝ち取ろうとしているよ」


「泥沼愛憎劇の文系生活と灰色の理系生活の間違いなんじゃないですか? それにアニメ化されると

理系に行きたがる人が減りそうですね」


 と、ツッコミを入れた。


 そんな会話をしているうちに柊さんの作ってくれた料理は食べ終わっていた。


「ちなみに看護学校って女性ばかりですよね? 女性ばかりだとどうなるんですか?」


「女の花園についてはノーコメントよ」


 めちゃめちゃ気になる。


「僕の夢の大学生活のイメージを壊しておいてそれはないでしょう」


「女同士が集まったってそんなにいいことないわよ。さぁ、食べ終わったことだし。私はお風呂に入

って寝ることにするけど、あなたはどうする?」


「僕はこのまま床で寝ます。」


「何言ってるの? 流石に床じゃ寝れないでしょ?」


「えっ? 流石に女性と同じベッドで寝るわけにはいかないです。」


「買い物に行ったついでにほらこれ」


 そう言って柊さんが取り出したのは寝袋だった。


「なんで寝袋なんてこんなところにあるんですか? もしかして柊さん、キャンプとかアウトドアが

趣味なんですか?」


「何言ってるのよ? 私はアウトドアはやらないわよ。買い物に行ったお店が二階建てのそれなりに

大きなところだったのよ。たまたま見つけたから買ってきたのよ。どう? できる女でしょ」


「めちゃめちゃできる女です! いいんですかこんなお世話になっちゃって? 後で高額な請求書と

か来ませんよね?」


「大丈夫よ、請求なんてしないから。ただお願いをいくつか聞いてもらうだけよ」


 そう言えば、宿代替わりにお願いを聞くって話だったか、どんなお願いなんだろう。


「ところで、肝心なお願いって何なんですか? まだ聞いてないですけど、教えてもらわないとお願

いを叶えることもできないですよ」


「お願いは後で教えることにするわ。私、明日も休みだし、ちょうどいいから明日は少し散歩でもし

ましょうかついて来てもらえるかしら?」


「それがお願いなんですか?」


「お願いが一つだなんて誰も言ってないって言わなかったかしら」


「ついていきます。一宿一飯の恩義ってやつです」


「あら、そんなに気にしなくていいわよ。大したことしてないし」


「僕にとっては泊めていただいただけで救われた気分になってますし、感謝してます。危うく雨の中

で野宿することになるところでしたし」


 そうお礼を言うと否定をされる。


「お礼はいらないわ。何せ取引なんだもの、泊める代わりに願いを叶えるって言う取引だったでし

ょ」


「だからその取引、お願いを聞いていないじゃないですか」


 俺は困った顔でそう言うと。


「明日の散歩の後にでも言うことにするわ」


 柊さんはそう言って、その日は寝ることになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ