暴かれる嘘
「なんで明石葵を処理しないんだよ」
そう切り出された。
「私は処理しておくべきだったと思ってる。なんで処理しなかったんだ?」
女性は聞いてきた。
いや、聞くと言うより半分くらい文句、半分疑問として言ったのだろう。
「明石葵は無害とまでは言いません。ですが自ら進んで害を与えるような存在でもありません。無理やり処理する必要もありません」
私ははっきりとそう言った。続けて言う。
「それに休日の高校にまで押しかけて明石葵を処理しようだなんて、やりすぎです」
「生やさしいものの考え方だと思うけど?」
と、スーツに身を包んだ女性、白瀬が言った。
「危険だから対処するべきだった」
スーツ姿の白瀬はさらに言った。
「明石葵は確かに、彼女の持っている能力は危険です。ですが、彼女はその使い方などはわきまえています」
私は反論する。
「姉さんは急進的過ぎます」
白瀬の姉はさらに言ってきた。
「どこが急進的なんだ、対応できるのは我々くらいなんだ」
「対応できるのは我々のような人間だけでしょう。でも彼女には自分から人間を害する意図はありません」
「ではもしも明石葵が何か人間に害を及ぼすようなら私は彼女を始末する」
そう言い残し、私の姉、白瀬瑞樹は去っていった。
「先に葵の件対処しといて良かったです」
残された私は一言呟き去っていった。
姉と私の意見は違う。
思想も違う。
それが仕事に対するスタンスに表れている。
ただそれだけの話。でも大きな食い違いでもある。
朝から姉とそんな話をして私は学校へ行くと和久さんが話しかけてきた。
「なぁ白瀬さん、吸血鬼って太陽に弱いんじゃないのか?」
そう聞かれた。そう言えばそうだ、葵は普通に昼間に出歩いてる。和久さんが疑問に思うのも無理はない。
「どう答えたら良いのかよくわからないんですが、葵のことですよね? 普通に昼間に出歩いてるし」
「そうそう、葵が昼間に出歩いてて、太陽の下でも問題なさそうに元気にしてるし、日光に弱いんじゃないんですか?」
「なんと言うか、人間だって性格も趣味も十人十色じゃないですか、そう言う感じです」
「そんなもんなのか」
「日光が苦手、というのは本当ですし、葵もそのはずです。ただおそらく、耐性があるって感じじゃないでしょうか」
まぁ、そりゃそうだ。人間にも得意分野も不得意な分野もある。
努力していないだけ、興味がないだけで才能がある分野もある。
葵もきっとそんな感じだろう。
専門家見習い卒業直前、プロになる間近の私でも、日光に耐性のある吸血鬼がいることは知っているが、葵がどういう理由で外に出ているのか、なぜ日の光に当たっても平然としていられるのかわからないけれど。
「白瀬さんの専門分野って、そんな感じなんだな、なんかほっとしました」
「ほっとしたって言うのは?」
「いや、葵とかの存在も人間っぽいんだなって思った」
そう言うと白瀬さんは少し驚いたような顔で俺を見て黙っている。
「どうしたんですか? なんか黙り込んじゃって」
「いえ、そんなことを言われるとは思わなかったので」
自分の言ったことがよほど変なことか? と疑問に思っているような雰囲気を出しながら和久さんはさらに聞いてくる。
「そう言えばあの日、Jアラートみたいな音を出したのって、白瀬さんで間違いないんですよね?」
「そうです」
「なんであの日、あのタイミングであんなことやったんですか?」
「それは、その当時、何も知らない和久さんと二人きりで葵と一緒にいるのが危険だと思ったから、、、です」
「もちろん、葵は無闇に人を襲うようなことはしないと思いますが、いつ血に飢えるかわからなかったので、、、職業上そう判断しました」
「そうですか、結果的に葵のこと知れたしよかったです。ありがとう、また聞きたいことあったら、専門家として教えてもらっても良いかな?」
「えぇ、構いません」
「僕はこういう分野の専門知識はないので、、、すごく助かります。それじゃあ」
そう答え、和久さんは何気ない感じで立ち去っていく。
私もその場を離れていく。
「「何も知らない和久さんと二人きりで葵と一緒にいるのが危険だと思ったから、、、」かぁ、へぇ、「、、、」と「!!!」より上が嘘ね。心理学勉強しといてよかったなぁー」
歩きながら独り言を呟く和久の姿を明石も白瀬も見てはいなかった。
私の作品を読んでくださった皆様へ。
作品を読んで下さり、誠にありがとうございます。
病気療養期間に趣味で書き始めたのですが、どうせ趣味で書くのだし文章でしか表現できないような、絶対に映像化できない。
そんなトリックでも使えないものかと考えたところ、「、、、」と「!!!」という嘘が伏線という下らないアイデアが頭の中に沸いたのです。
とは言いつつも世の中には大巧は拙なるが如し(すぐれてたくみな人は、細工をろうしないからかえってへたにみえる。)という言葉があります。
世の中、技術のある会社さんや職人さんはいくらでもいらっしゃいますから、この程度の作品は簡単に映像化できてしまうのでしょう。
と言いつつ・・・実のところを言うと・・・
私が病気(躁うつ病)になった原因の一つが私が噓をついていないにも関わらず、嘘をついたと思われたことなどが原因なので、若干ストレス発散的なものも兼ねております。
(主にそちらが原因でこのアイデアを思い付いたわけです(泣))
それにしても、「、、、」と「!!!」が嘘だなんてくそみたいな作品を読んで下さりありがとうございます。
ある程度、書き溜めておりますが、更新頻度は落ちると思います。
それでは失礼いたします。