7話 『月島さん』
礼二の本命彼女を知るべく、恭太は手当たり次第に聞き回った。
「笹山先輩? 彼女はいると思うけど……誰かまではちょっと……」
「礼二、そういう話教えてくれないんだよー。ごめんねー」
「前に告ったら好きな人がいる、って言ってた……から。彼女……いると……思うよ」
「知らなーい、てか君、誰?」
本命彼女と付き合って、そこから一人目の浮気相手と付き合うまでの期間。すなわち礼二がまだ浮気をしてなかった期間なら、礼二は誰かに彼女の話をしてる可能性がある。
「俺、そこまであいつと仲良くないからさ」
「ごめん、分からないや」
「礼二の彼女? なんでそんなこと知りたいのー?」
「あいつと同中の奴知ってるから聞いてあげようか?」
丁度十人目くらいで、ついに恭太は有力な情報を手にした。
「月島さん、っていう一年前まで付き合ってた子がいたけど……転校しちゃってね。だから今どうしてるかは……」
どうやら礼二には一年前まで『月島さん』という彼女がいたらしい。
けれど月島さんの転校を期に関係は不明。真実は当事者の二人にしか分からないと、三年の先輩が教えてくれた。
「……いえ、ありがとうございます。その月島さんって方はどちらに……?」
「隣の県だったかな……。けど、最近二人がこの辺歩いてるのを見かけたって噂もあったし、多分まだ付き合ってるとは思うよ」
俗に言う遠距離恋愛というやつだった。
噂の範囲でしかないが、確かに本命の彼女が遠くにいるのなら礼二が平気で浮気できるのも説明がつく。おそらく絶対にバレない自信があったのだろう。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして。……けど、こんなこと聞いてどうするの?」
「知り合いがその……笹山先輩のことを好きみたいで。彼女がいるか調べてきてって頼まれたんですけど……諦めるように伝えときます」
恭太はそれっぽいことを言ってその場を立ち去った。
「……」
聞き回る恭太を影からずっと眺めていた少女の存在に、恭太が気づくことはなかった。
× × ×
「月島さん……その人が、礼二先輩の本当の彼女かもしれないんだ?」
「ああ、まだ確定ではないけど……最近も二人で歩く姿が目撃されてるって言うし、その可能性はかなり高いと思う」
放課後、家のベットでだらけている恭太に一通のメールが届いた。
美里亜からだった。
話があるから指定したカフェに集合と言われ、二人でテーブルを囲んでいた。
「俺の方はこんな感じ。……で、話って?」
美里亜に「昨日から何か進展あった?」と聞かれて一通り話し終えた恭太は、本題に切り込んだ。
美里亜は紅茶を一口飲んでから言う。
「思い出したことがあるの。付き合ってまだ二、三日くらいのときにね、私……先輩の家にお邪魔することになったの」
昨日初めて礼二の家を訪ねた美里亜は、過去に一度約束していたらしい。
「……けど、直前にドタキャンされちゃって。体調悪くなったから、って。だったら仕方ないかぁって諦めたんだけどね」
美里亜の顔が曇る。
「私、見ちゃったんだ。先輩が一人で駅に入ってくとこ。体調不良って言ってたのに、なんでだろう、って……その時は深く気にしなかったんだけど」
美里亜は続けて言った。
「今思うと……礼二先輩は誰かに会いに行ってたのかも」
恭太は真っ直ぐ美里亜の目を見た。
美里亜は小さく頷いた。二人は同じことを思ってるようだった。
「それがその……月島さん、なんだと思う」
この瞬間、バラバラだったピースが繋がっていった。
できあがったパズルは不確定な予想にすぎないが、大いに筋は通っていた。
「……ってことは、胡桃が本命じゃないのは確定……か」
「……うん。同じ浮気相手なら先に約束してた私の方を優先するはずだし、本命は月島さんで間違いないと思う」
胡桃は本命彼女じゃない。
この事実は、恭太の視界を塞いでいた障害を取り除いた。
そして、これを機に復讐計画は大きく動くのだった。
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