28話 『家族会議part2』
「ただいま……」
家は静かだった。
元々騒がしいわけでもないが、今日はいつもより一層、野外の音が大きく感じた。
リビングに顔を出すと、母が強張った形相を浮かべて待っている。側には碧人もいて、胡桃はすぐに異様であると理解した。
「……どうしたの?」
恐る恐るといった様子で聞いたのは、胡桃にも心当たりがあったからだ。
もしかして……もしかするんじゃないかと、冷や汗と表現するに相応しい汗が凍りつくような寒気と共に額から溢れた。
「三橋くんとは、別れてるんだってね」
母は胡桃にそう尋ねた。
妙に柔らかい語尾が、より胡桃を怯えさせた。
「な、何でそのこと……知ってる……の?」
思ったことがそのまま口に出た。
家族に隠し通そうと決めたはずなのに、すでに母の元に情報が渡っている。隣で強く唇を噛み締める碧人を見て、胡桃は大方を察した。
「碧人から聞いたのよ」
「……俺は、恭太さんから」
胡桃の中で、何かが音を立てて崩れていく気がした。
礼二と話してもしかしたら上手くいくかもしれないと期待した矢先、光が黒く塗りつぶされた。
「浮気なんて……どういうつもりなのッ!!?」
母は怒鳴る。胡桃は思わず肩をビクつかせて「ご、ごめんなさい」と無意識に零れでた。
「母さんに謝ってどうするのよ!! 三橋くんには……彼にはちゃんと謝ったのッ!!?」
「…………」
「胡桃!!」
信頼していたからこそ怒りは大きくなる。黙り込んだ胡桃に母は強く怒鳴ると、胡桃の目からは涙が溢れ出した。
「相手は三橋くんじゃないなら、誰? 先輩って同じ学校の人? 胡桃、ちゃんと話しなさい」
胡桃は話した。声を震わせながら。
途中で碧人は気まずくなったのか、部屋に戻ってしまったが、最後まで話を聞いた母の顔は真っ青になっていた。
「胡桃……なんてことを」
「……ごめんなさい」
その後、仕事から帰宅した父にも話して叱りを受け、翌日病院に行った結果妊娠が発覚。
先のことは礼二と話し合った上で決めろと言われたが、既に胡桃は身も心もボロボロなのだった。




