27話 『協力してください』
「ごめん……お待たせ」
集合時間ぴったりに公園に着くと、すでに胡桃の姿はあった。
礼二が恐る恐るといった様子で声をかけると、胡桃はにこやかな笑みを見せる。
「よかったです。ちゃんと来てくれたんですね」
「あ、ああ。……で、妊娠したってのは……本当なのかい?」
あの電話から礼二は気になって仕方がなかったようで、到着するや否や胡桃に本題をぶつけた。
「……えぇ、多分。明日お母さんと病院に行ってみます」
胡桃はお腹に手を添えた。
「そ、その……何かの病気とかじゃ? ちゃんと対策だってしたはずなのに……」
「別に、先輩を責めるつもりなんてありませんから……」
ゴムだけを用いて安堵していた胡桃たちは、行為後の影響などそこまで深刻に想像していなかった。
これくらいで十分だろう。欲に囚われそんな軽い気持ちで致した結果、今の状況は生まれていた。
礼二は自分が妊娠させてしまった事実を受け入れられないようで、なんとかそれ以外の可能性を探ろうとした。
「ごめん……胡桃ちゃん」
「別に平気です。……その代わり」
胡桃はニイっと口角を釣り上げた。
「協力してほしいんです」
昨日の電話でも言っていた協力。
礼二はごくりと固唾を飲んで身構えた。
「私、家族にはまだ三橋君と付き合ってると思われてるんです。でも、もう直本当のことがバレる。…だから、私は彼とは既に別れていて、今は先輩と付き合ってる。もし、妊娠が確定したら私と一緒にお母さんにそう証言してくれませんか?」
恭太と別れた→新たに礼二と付き合う→彼と性行為を→結果妊娠してしまった
この流れを作り上げてしまえば、胡桃の負うダメージは減る。ただ彼氏と別れて新たな彼との子を妊娠してしまっただけなのだから、倫理的に咎められることはない。
ただ、問題は恭太だ。彼に妊娠の事実を知られれば、何か良からぬことを企むかもしれない。
加えて、家族間同士で交流があるのも厄介だ。一旦この嘘を信じさせたとしても、後々両親が恭太の両親に喋り真実が発覚したらお終いだ。
「……分かった。それくらいの責任は、僕もとるよ」
礼二は胡桃の要求を聞き入れた。
明日の検査の結果、胡桃の妊娠は確定するのだが、この要求が果たされることはないのだった。




