22話 『家族会議』
父と母。そして胡桃。碧人は空気を読むも気になるようで、離れて様子を伺っている。
重い空気に包まれた家で、まず口を開いたのは父だった。
「胡桃、本当なのか?」
母から事情を聞いた父は、本人の口から事実を求めた。胡桃は小さく頷く。分かりやすく両親の顔色が変わった。
「おかしくなったのは、いつからだ」
「最近……だと思う。気づいたのも最近」
辺りを沈黙が包む。
母は胡桃を気遣うように声をかけ、けれどその言葉は胡桃の心を大きく抉った。
「大丈夫。三橋くんならきっと、親身になってくれるから。彼にはもう話したの? まだならすぐに相談しなさい。あちらの親御さんとも話さなきゃ」
「…………うん」
胡桃は小さく応えた。
手が震える。本当のことを言えない。なにせ胡桃と恭太は付き合ったときに、そういう行為は焦らずゆっくりでいいと決めていたのだ。
つまり――今胡桃のお腹に宿る命は恭太とのものではない。礼二だ。礼二と胡桃はすぐに関係を持った。積極的な礼二におされて、胡桃はあっさりと身を捧げた。
ちゃんと対策はしたはずなのに、該当する人物が彼以外に見当たらない。
胡桃は俯いて黙り込む。
「どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
相手は恭太ではなく別の人。そしてその人とは既に別れている。原因は胡桃の浮気で。
そんなこと説明できるはずもなく、胡桃は静かに頷くしかなかった。
この選択が余計に自分を苦しめることくらい、分かっていたというのに。