17話 『胡桃の反撃②』
「悪い、恭太! 先に帰ってくれ!」
そう言うと、諒は慌ただしく階段を駆け上がっていく。どうやら委員会の仕事で居残りらしい。
同じ方面に住む友人がいないため、恭太は一人で帰ることにした。
(…………ん?)
昇降口を出ると、妙な二人組を前方に見つけた。
(矢吹さんと…………胡桃!?)
珍しい組み合わせだ。中学は違う、部活も違う、おまけにクラスも違う……そんな二人が帰路を共にする理由。
なんだか嫌な予感のした恭太はしばらく様子を伺うように、二人の後を追うことにした。
何か話しているようだ。楽しそうではない。
胡桃が美里亜に携帯画面を見せ、必死に何かを伝えようとしている。離れた位置から見る恭太に分かったのはそれくらいだった。
(何してるんだ?)
もしかしたら何か面倒なことを企んでるのかもしれない。恭太の心に不安がよぎったその時、目前の状況が一変した。
胡桃が美里亜の襟を掴み、押すようにして道脇の塀に寄っていく。
怒りを滲ませた胡桃の顔と困惑した美里亜の表情を見て、恭太はすぐに駆け寄った。
「おい!! 何してんだよ胡桃!!」
恭太の声に二人はこちらを向く。
「三橋くん!」
「……どうしてここに?」
胡桃はバツが悪そうに舌打ちをした。恭太が近づくと逃げるように胡桃は走り去ってしまった。
「大丈夫?」
「う、うん……ありがとう」
美里亜は小刻みに震えていた。怖かったのだろう。突然胡桃に迫られて、もし恭太が来てくれなければどうなっていたか分からない。
「ごめん……俺のせいだ」
「み、三橋くんは悪くないよ!」
「胡桃、前に言ってたんだ。後悔させてやる……って」
「……それって」
「俺に復讐し返す、ってことだと思う」
恭太は再度謝罪した。美里亜は大丈夫だと言い続けたが、恭太は自分が怒りのままにやった復讐のせいで彼女を危険に晒してしまったことが申し訳なかった。
恭太はせめてものお詫びとして、美里亜を家まで送るのだった。