表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/51

15話 『視線②』

「月島さん……ですか?」

「あなたが三橋くん?」


 最寄駅の前で、携帯片手に立つ女性。丁度人が少なく唯一誰かを待っている様子の彼女に話しかけると、合っていたようだ。


「遅くなってすみません」

「気にしないで、私が早く来すぎただけだから」


 集合時間の十分前。確かに恭太は遅れたわけではないが、初対面で先に待たせてしまうのは気まずさがあった。


 月島由香。

 今日、学校で礼二に話しかけられたかと思えば、彼女が恭太に会いたいと言っていたらしい。

 本当かと疑う恭太も、実際に月島と名乗る彼女と会えば信じるしかない。

 わざわざ遠くから会いに来た彼女は、何の用だろうか。礼二関連であることは間違いない。


「ひとまず歩こっか」


 そう言って、月島と恭太は宛もなく街中を歩き始めた。

 背は高く、スラリと長い手足はモデル体型。色素の薄い金髪は肩まで流れて、礼二と似た色だ。

 そんな彼女と初対面で二人きり。恭太は気まずさと緊張感に押しつぶされそうだった。


「礼二から聞いたわ。あなたのやったこと」


 しばらく地獄の無言時間が続いた後、月島が口を開いた。


「ありがとう。おかげで浮気を知って、礼二と別れることができた」

「……いえ、役に立てたなら良かったです」


 一瞬怒られるかと身構えたが、凛とした顔に笑みが浮かんで恭太はホッとする。

 どうやら月島と礼二は別れたらしい。長く続いた関係とはいえ、浮気した相手を許すつもりはないようだ。


「案外気づかないものね。会う機会が減ってたけど、浮気されてるなんて思わなかったわ」


 礼二は上手く浮気を隠していた。だからあんな量の浮気相手がいてもバレなかったわけだが。


「今日はお礼を言いたかったの。面と向かってね」


 美里亜と同じで、月島もまた恭太に礼を告げるために呼び出したと言う。

 言い終えると満足したように伸びをした。


「……ところで、後ろの彼女。知り合い?」

「え?」


 月島の言葉に恭太は振り向く。

 見覚えのある少女が遠くに見えた。胡桃だ。まだ着いてきていたようだ。


「さっきからずっと着いてきてるみたいだけれど」

「……いえ、知らない人です」

「そう、気のせいかしら」


 ここまでしつこいと少し不安になる。恭太は背後の胡桃に意識を割きつつも、ぐるりと辺りを一周し一時間ばかりで駅に戻ってきた。


「じゃあ、また……と言ってももう会うことはないかもしれないけど」

「そうですね。わざわざありがとうございました」

「こちらこそ。バイバイ」


 思ったよりあっという間だった。

 恭太は改札を潜った月島を見送ると、後ろを振り向く。胡桃はいなくなっていた。


(……めんどくさいなぁ)


 心の中でそう呟いて、恭太は家に帰るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 胡桃の復讐は 「月島さんと交際している」とか 「恭太も浮気している」かな? 『お前の愛しの先輩の【本命だった人】』で 全部破綻するけど……。 自爆を重ねて転がり落ちるかな?
[気になる点] でっちあげても、信じてもらえないと意味無いんだよなぁ。
[気になる点] まさかの月島さん登場 尻軽元カノの中では主人公が礼二並に何股もかけてる浮気男になってそう というか、そういう風に仕立て上げるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ