幸先良し
世界と世界がつながっている。
僕が生きているのはそんな世界だ。
世界の境目……『界境』と言われるそれを潜ると、直前まで居た世界とは全く異なる文化、気候、生物が生息する『別世界』が現れる。
そして、『界境』の先は常に変動し続けているんだ。
くぐり抜けた直後に引き返したとしても、戻った世界は全く別の世界になっている。
僕が生きているのは、そんな世界だ。
そして僕は、今訪れたこの『世界』で投獄されていた。
「いやぁ、僕も色々な世界を旅してきたけどさ。街を訪れた途端に牢屋に入ったのは初めてだよ?」
「そうか、いい経験になったな」
石で作られた牢屋は薄暗く、鉄格子の向こう側の女性は非常に淡白な言葉を返してくれる。
「……。僕、捕まるような事しましたっけ?」
「いいや、お前は何もしてないな」
取り付く島もない。
ではなぜ、こんなところに連れ込まれたんだろうか?
「ええっと……事情を聞いても?」
「あぁ、まぁまだ夜までに時間はありそうだな、良いだろう」
「まずお前、ここがどこだか分かっているのか?」
来たばかりだからなぁ、判断材料は少ない、とも言えない。
まず目の前の女性。
長く白い、透き通るような髪と美貌に目が行きがちだが、
それ以上に特徴的な
「その耳、その魔力。あなたはエルフですかね?ここはエルフの国、でしょうか」
そう、尖った耳だ。
エルフは美しく整った容姿、色白の肌、白や薄緑の髪をしている事が多く、
内包する魔力が非常に多いことで有名だ。世界樹の影響下で育つ為、魔力の色も聖寄りになるという。
間違いなくエルフなんだろうな、とは最初から思っていた。
この辺りに充満する魔力も聖に偏っており、色白の美しい外見もエルフ一族と合致す―
「魔力?我々が有する力は修練を経て身につける『気力』のみだが?」
「エルフ?なんだそれは?我々は誇り高き熱帯耳長族だ」
「ここは熱帯耳長族の国、ユグドラだ」
えぇ……
パワー系エルf……耳長族が統べる国