秋葉原ヲタク白書45 秋葉原アンダーワールド
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第45話です。
今回は、コンビ結成の頃を振り返ります。失踪メイドを追い、コンビは闇カジノに辿り着きます。
ところが、ソコは中華マフィアに乗っ取られ、大勢の客が破滅する黒世界になっており…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 萌え始めた街
僕は、御屋敷で取材を受けている。
フラッシュライトが次々焚かれ、カメラが突き出されて、インタビューが始まる。
まぁ、フリープロデューサーのスズキくんが全部ひとりでやってルンだけどね笑。
「人気SF作家、世界のテリィたん。彼が新作のために必ずリサーチするのが彼女。老舗御屋敷のメイド長、ミユリさんです。ミユリさん!テリィたんのモデルに選ばれ続けるコトに何か御感想は?」
「テリィ様のお力になれて、アキバのメイドの1人として、とても光栄に思います」
「アキバ心理に精通したテリィ氏のヲタク力が、この街で起きる難問奇問の解決に大きく貢献してイルとお考えですか?」
え?アキバ心理って何かな?
ってかヲタク力って何なの?
空とか飛べちゃうのか?などと妄想しつつ、僕はスズキくんの話をボンヤリ聞き流す…
どうやら、今回はスズキくんの関心は、僕の相棒のミユリさんに集中してるみたいだ。
"内助の功特集"かなw
ま、自分の推し(てるメイド)がフラッシュを浴びるのを見るのは実に気持ち良いのだが…
しかし、アキバ系文学の最高峰「アキバ賞」をメデタく受賞したのは、僕なんですけど。
あ、ミユリさんが異議申立てw
「ちょ、ちょっち待って。スズキくん、アキバ心理はともかく、その"ヲタク力"って何なの?フォースみたいなモノ?そもそも、テリィ様がそんな"力持ち"だって誰から聞いたの?JEDIから?」
「え?御本人からですょ」
「テリィ様!貴方、御自分にそんな力があるとでもお思いなのですか?先日の千夜一夜物語の時だって…あ、スズキくん、ココからオフレコだから。カメラ止めて」
「わ!コレ、ライブなんだけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
随分と昔のような気がする。
ミレニアムを過ぎた頃から流行り出したメイド喫茶は、西は池袋、東は秋葉原を中心に集積しヲタク文化として独自の進化を始める。
すると、今まで異性への感情など自室で反芻するだけだったヲタク達が街へと繰り出す。
ソコで彼等を待つのは、同じヲタクテイストの女子、未だ手作り感が満載のメイド達だ。
「おかえりなさいませ、御主人様。メイド長のミユリと申します」
「初めまして。僕はラッツ…じゃなかった、テリィ」
「改めまして、おかえりなさいませ。テリィ御主人様」
そんな、やっと萌え始めたアキバの片隅で、僕とミユリさんは、初めて出逢う。
当時は、アキバは未だ電気の街だったから、大型家電店の店頭ライブとかが全盛期。
スピーカー付きマイクを手に、アイドルがナゼかメイド服で歌う姿が新しい風物詩。
因みに、今、アキバを席捲してるインバウンドは、人影はおろか、言葉すらない笑。
「ひろみんの御紹介でお邪魔してます。実は不調法なんですが」
「承ってます。よろしければ、私のオリジナルカクテルをノンアルでつくって差し上げますが」
「あぁ、助かった。実は白状すると、今日は僕が生まれて初めて"バー"に足を踏み入れた日なんです」
ミユリさんは、そうなの?と逝う顔をして、カウンターに酒瓶やら炭酸やらを並べる。
バーテンと逝うより秘薬を調合する魔女って感じwマドラーを当てた手の甲を舐める。
「召し上がれ。あ、その前に…」
「えっ?」
「コチラはサービスとなります」
彼女はグーパンチを繰り出し、猫のような軽いエアパンチが、僕の頬を撫でる。
何だかとてもハッピーな気分になった僕は、ヤタラ大袈裟に仰け反ってみせる。
すると、彼女は、声を立てずに笑い、まるで舞台役者が客席にするような御辞儀をする。
そのやりとりを見てた常連達は、その時ミユリさんにTOが出来たコトを知ったと逝うが…
まぁ、ソレこそ大袈裟なんじゃナイかなって思うんだけど。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「頑張ってましたか?ひろみん」
「うん。第百家電の前で。日が暮れるのが早くなったから、木枯らしにミニスカで少し可哀想でした」
「ソレが好きでアキバに出て来た子達ですから。コレからも応援してあげてくださいね」
少し打ち解けたミユリさんと話は弾むが、僕は別に彼女を口説きに来たワケではない。
ある日、忽然とアキバから姿を消してしまった、あるメイドのコトを探しているのだ。
「エリスさん、ですょね?@ポエム(大手メイドカフェ)を卒業して…何かギャンブルの噂を聞きましたが。確かテリィ様は、彼女のTOをされていたのでしょう?」
「はい。でも、実は他のヲタクの方から頼まれてTOを引き受けただけなんです。ソレも彼女が姿を消した後で」
「まぁ。ソレもおかしな話ね。姿が消えてからTOを任されるなんて」
TOと逝うのはアイドルヲタクの代表のコトだ。
ミユリさんは、カウンターの向こうから、僕を見つめる。楽しげに品定めって感じw
大方、貧乏クジを好んで引くヲタクはどんな顔してるの?とか思ってるに違いない。
後で聞くと、ひろみんは「新しく推しを探してる人がいるから」位の話をしたそうだ。
コッチは店頭ライブを終えたひろみんから「楽しいバーがあるの」と逝われたんだがw
未だ大根足だった頃のひろみんらしい話←
国のカワイイ大使に任命される遥か前だw
「とにかく、今宵、めでたくバーデビューが出来たので、次はカジノデビューかなって思ってルンです。"秋葉社"って御存知ですか?」
「…エリスさんがギャンブルをなさってた闇カジノですょね。存じてますけど。しかし、一見さんが入れるどうか」
「ソコを何とか。と逝うか、実はカジノへは客として入りたいワケじゃなくて、出来ればカジノの裏側に入り込みたいのです。もしかして、何か、消えたエリスの消息がわかるかもしれない」
すると、ミユリさんは暫く考える風だったが少し堅い口調で言葉を繋ぐ。
「今、テリィ様はアキバのアンダーワールドを覗こうとされています。テリィ様が何かを覗くのは構わない。でも、その時に向こうも貴方を覗くのですょ?自業自得のエリスさんのために、貴方はソコまでなさる勇気はお持ちですか?」
「え?だって、僕が"何か"をしなきゃ、消えたエリスが浮かばれないんですょ?だから、僕はやる。だって、僕はTOだから」
「わかりました。でも、最後にもう1度だけ伺います。貴女は、アキバのメイドのために、ソコまでなさる勇気がおありなんですね?」
僕が即答でうなずくと、ミユリさんは今後、僕が何度も目にするコトになる、あの長い、長い溜息をついてから…ニッコリと微笑む。
「…テリィ様は、JAZZミュージシャンだと伺っていますが?」
第2章 アキバの"speakeasy"
ソレから数時間後、僕は"秋葉社"のホールで"スーパーボーン"を吹いている。
トロンボーンにバルブを追加した特殊楽器でソロもアンサンブルも器用にコナす。
御一緒するピアニストは白髪、ベースマンは禿げ…お2人とも僕より遥かに歳上らしいw
しかも、歌伴でもないのに全曲トンでもない調で演奏するw根気よく追っかけていたら…
何曲目からか、急にB♭に落ち着き、どうやら、仲間に入れてもらえたみたいだ。
ベースマンからアドリブソロのオーダーが来たけど、コチラがバンマスだったかw
禁酒法時代の"潜り酒場"を"speakeasy"と逝うらしいが、ココは"潜りカジノ"だ。
厳格なドアポリシー、中は低い天井に隠し部屋、ソコで蠢く人々が発する犯罪の雰囲気。
さすがに飲酒は合法だから、ソレが違法な闇カジノが醸すムードと逝うコトなのだろう。
バンドスタンドから目を凝らすと、奥のテーブル席でのトランプ勝負は正に真剣勝負だ。
崖っぷちの人生そのものを賭けた、鬼気迫るゲームの果て、破産と破滅が訪れる。
ガタンと大きな音がして、見ると顔面蒼白で立ち上がった男を周囲が座らせるが…
何とテーブルの下で拳銃を突きつけてるw
何とか無事?全曲を演奏し終えた僕達は控室に戻る頃はスッカリ打ち解け顎飯タイムだ。
温かいだけが取り柄の不味いシチューライスをかっこみながら、禿げベースに話を聞く。
「驚いたなー。奥の席、テーブルの下で拳銃を抜いてましたけど」
「あぁ。初日から変なモン、見せちまったな。ココは闇カジノなんだ。あっちのテーブル席は賭け金無制限だ。しかも、汚い手口で掛け金をドンドン引き上げる。挙句、負けた客にトンズラされないよう、用心棒は拳銃を持ってる。カジノの全員がグルになって、訪れた客を身ぐるみ剥ぐ仕掛けになってるのさ」
「そ、そんなコトが日本で許されルンですか?確かオーナーは"低い城の男"さんでしたょね?コレじゃ大陸の連中、ノサバり過ぎでしょ?しかし、万世警察も情けない。何でパクらないの?治外法権?」
聞きかじりのオーナーの名を出すと禿げベースがギョッとした顔をして絶句してしまう。
「お、おい!何で"低い城の男"なんて知ってるんだ?まさか、お前も自分の借金のカタに…そうか!わかったぞ。それでお前だけギャラがあんなに安いのか」←
「待ってください。僕は、昼間は真っ当なサラリーマンをやってまして、みなさんのようなプロじゃナイんです。だから、演奏を御一緒させて頂くだけでもう夢のようなんで、もともとギャラなんか、欲しがりません勝つまでは」
「そ、そうか。じゃ遠慮なく(ピン)ハネさせてもらう。ホント、お前は色んな意味で大歓迎だ。しかし、それにしても"低い城の男"の名がお前の口から出るとは不可解だな。あ、またまたわかったぞ!お前は、最近流行ってる"ヲタク"って奴だな?きっと"地下世界ヲタク"に違いない」
そんなヲタクはいませんw
「ま、とにかく今、このカジノはヤバいんだ。"低い城の男"が実の娘絡みの賭けで大負けしたとかで、箱は大陸の連中に乗っ取られかけてる。歌舞伎町なんかでよく聞く話だ。もともと、秋葉原は青果市場て、ロクにミカジメも取れねぇから、昔からヤクザも手薄なエリアだったのさ。ソコへ、大陸で、毎日平気な顔して人殺してた連中が薬でぶっ飛んだ白目を剥いて青龍刀とか振り回した日にゃ、日本のヤクザじゃ、とても太刀打ち出来ねぇ。自衛隊を呼びたい位だ。赤坂もこの手で、いつの間にやら奴等に盗られちまった」
「へぇ。大陸系って、広東ですか?」
「今は福建だょ」
しかし、やっぱり僕だけギャラ安いんだ笑
崇高な任務中とは逝え、モチベが下がるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こんにちわ。貴方が"低い城の男"さんですか?はじめまして。ラッツと申します…しかし、驚いたな。ココまでヤラレ放題とは。もはや、貴方の店ではナイじゃナイですょね?」
「お前がラッツか…確かに面目ねぇ。エリスをヤッたのも福建の奴で青龍刀のタトゥーのある野郎だ…青果市場が出てった秋葉原が、今後どんな街になるのか、俺も想像出来ねぇ。しかし、奴等が跋扈する街にだけはしたくナイんだ。未だ望みはある。お前達の力で取り返してくれ。日本の夜を。健全なアキバの夜をょ」
「日本の夜、って蚊取り線香のCFじゃあるまいし、ソレに"お前達の力"って何?まぁ、確かにヲタクには"ヲタクの力"があるカモしれナイが…と・に・か・く!コッチも青龍刀のタトゥーを背負った福建兄ちゃんには用がある。とりあえず、エリスが生きてる証拠も欲しい。ヤレるコトはヤッてみましょう…もし、お力添えがいただけるなら、ですが」
第3章 バンドマン、時々ギャンブラー
胸元がシッカリと空いたメイド服。
寄せて上げた胸の谷間がクッキリ。
「ねぇ。私が行かないと御主人様が負けちゃうの。私、御主人様の幸運の女神だから。どうしても入れてくれないの?」
闇カジノは雑居ビルの地下にあり、1Fは中華料理屋で厨房非常口の隠しドアから入る。
つまり、カジノ自体が隠し部屋なんだけど、入口の厨房でイカれたメイドが絡んでるw
「どーしてもダメ?じゃ、こうしましょう。私が入って、私の御主人様が大儲けしたら、その幸運を貴方にも御裾分けしてあげる。お金と…私で」
明らかに厨房に不似合いな黒服の男が、明らかに厨房の主と思われる中華コックを見る。
中華コックが黙ってうなずく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕は地下の狭い楽屋でスーパーボーン片手に、白髪&禿げから蝶タイを渡されてバンドスタンドでの着用を逝い渡されてる。
この蝶タイは3人でお揃いだ。
どうも気に入られたみたいw
しかし、白髪&禿げの御期待?に背き今宵僕(達)は"speakeasy"を大混乱させる予定。
手順は、先ず僕が演奏の途中でバンドスタンドを離れ賭けポーカーのテーブルに加わるw
もちろん、白髪&禿げは度肝を潰すが、流石はプロで彼等の演奏が途切れるコトはない。
しかし、着席して初めて気がついたが、このテーブルの福建は全員がタトゥー入りだょw
さらに、僕の周囲には、スワ何事?と他の福建もワラワラと集まって来ちゃって、もう見回す限り福建のお花畑状態になってしまうw
「君、きれいだね」
ヤブレカブレで僕がタトゥー福建兄ちゃん1号に話しかけると、彼は明らかにドギマギw
「あ、誤解しないでくれたまえ。タトゥーのコトだから」
「お前、黙ってゲームしろ」
「そのタトゥー、変わった形だけど何て刀かな?ま、無理に答えなくてもいいや。実は、僕は作家で今、リサーチしてるトコロなんだ」
脇の福建兄ちゃん2号が意外そうな顔。
「作家なのか?本は有名なのか?」
「今、戦隊モノの来シーズンの脚本を書き上げ中だけど、来シーズンは"地下"の話になる予定だ。その執筆のためのリサーチに来てる。話にリアリティーを出すためにね」
「そうか。ソレは結構だ。じゃ、スッカリ打ち解けたトコロでゲームを始めよう。(以下、福建の言葉で)さぁ、搾り取るぞ。しかし、コイツ、金はあるのかな?」
ソコへ左右に女を侍らせた"低い城の男"が狭い階段を降りて来て…右の女はエリスだ。
肩の張ったスーツでキメてるが"何か"が歪んでいる…左の女は金髪に染めた大陸の女。
やっぱり、ココにいたんだね。
一目逢えて良かった、エリス。
コレで最後かもしれないけど…
"低い城の男"は、黙って僕の背後に立ち、まるで後見人のように睨みを効かせる。
福建の連中も"低い城の男"のケツモチなら文句は無いらしく、カードが配られる。
そして、僕は…ボロ負けw
と逝うか、そもそもポーカーのルールを全く知らないので仕方ない。
そして、散々負けて、もうコレでラストと逝う時にカードの数字が…
キレイに並んだんだけど、惜しいコトに最後の1枚だけトンチンカンだw
ダメか!潔く手持ちのカードを捨てたら…何と場が一斉に色めき立つ!
「インサイドストレートか?」
「何?俺のエースのスリーカードが!」
「コイツ、何者だ?」
次の瞬間、福建兄ちゃん1号がテーブルの下で僕に拳銃を突きつける。
そして…2号は立ち上がって"低い城の男"の後頭部に拳銃を当てる。
そして、3号は…拳銃を弄びながら僕に尋ねる。
しまった。拳銃は3丁か。思ってたより多いなw
「さて、作家センセ。君の新作について、もう少し話を聞きたいな」
「地下ポーカーが好きな福建マフィアの話なんだ。メイドを崖っぷちに追い込み、全財産を賭けさせる。さらに、高利で金を貸して…誰かさん達と一緒さ。挑発して食いつくのを待つ。しかし、奴等には1つだけ誤算があった。アキバのメイドには、必ずTOがついている。推し(てるメイド)とは魂と魂で繋がっているTOがね」
「そうか。すると、困った福建マフィアは、そのTOとやらも一緒に殺すしかない。他の債務者にシメシをつけるためにもな。ある晩、そのTOを地下カジノの隠し部屋に呼び出して首を絞めるか、頭をブチ抜くか…」
福建兄ちゃん3号が、テーブルの真正面から、ピタリと僕の額に銃口を向ける。
「作家さん。さっきの話は誰から聞いた?誰がお前に話したのかは知らんが、ソイツも金さえ払えば生きてられたのにな。というワケで、次はお前の番だ。後が面倒なんで、最後に聞くが、お前、まさか警察じゃナイだろーな」
「バレたか。実は潜入捜査だ。さぁ、どーする?」
「どの道、殺す。後の手間が違うだけだ」
福建3号が、僕の額にグリグリと銃口を押し付け僕は目を瞑るが、ソコへ…
「テリィ御主人様!コチラの方々に何か御迷惑を?ホント、新しい御主人様には手を焼くわ。私のTOになるのは止めて頂こうかしら」
ミユリさんだw
ヤタラと胸元を開いた風俗メイド服&赤い見せブラと逝うイカれたコスプレ。
ホール中の男の視線を一身に浴び、モンローウォークで福建ボーイズに迫る。
3つの銃口が一斉に彼女を狙うw
「あら。銃じゃ私は落とせないわ。私を落としたいなら…貴方は別のモノを出さなきゃ」
ミユリさんの手が福建3号の股間に伸びる。
こ、この果報者っ…
次の瞬間、何が起きたのか、僕にはとうとう分からず仕舞いだ。
何しろ、ミユリさんに押し倒され床に叩きつけられてたからねw
その後、時々正気に戻るエリスが「階段からネズミが落ちてくるのが見えた」とか逝うのを聞いて、思わず笑ってしまったんだけど…
ソレはXM84音響閃光手榴弾だ。
凄まじい音と光の暴力に、全ての者が床に打ち倒され両目両耳を抑え、のたうち回る!
ソコへ、慣れた身のこなしの男達が短機関銃を手に突入して来て、たちまち場を制圧!
「脅威1,2,3全て排除。目標を捕捉。先行偵察員は無事。状況終了」
「御苦労、軍曹。当地を占領する。捕虜を集めよ」
「了解。シノン大尉殿」
ん?敬礼した男達から報告を受けるのは"低い城の男"の左にいた金髪チャイニーズだ。
特殊部隊指揮官?拳銃を組み込んだ僕の改造スーパーボーンを手にテキパキ命令を下す。
後で聞いた話だと、彼等はワケあって大陸から部隊ごと亡命してきた特殊部隊とのコト。
その後、福建マフィアからカジノを奪取、アキバで健全なメイドカジノ経営に乗り出す。
亡命先で生計を立てる術を探してた矢先のコトで、ミユリさんの話は渡りに船だったらしい。
因みに、彼等のカジノは今では"音響閃光手榴弾のカジノ"と呼ばれてインバウンドに人気w
あ、海外じゃ"フラッシュバンセオリー"って呼ばれてるらしいけど、知ってるかな?
床に伏せていた者達がヨロヨロ立ち上がり、福建マフィアはホールの隅に集められる。
僕は、このままイカれメイドのミユリさんの下敷きになっていたかったのに残念無念←
「最初は、イカれた福建兄ちゃんを写メで撮るだけの作戦だったハズだったんですけど」
「では、メイドの先走りでしたね。どうぞお許しくださいませ。でも、こーゆーミユリはお嫌いですか?テリィ御主人様」
「ソレが大好物で。困ったコトに」
僕が両手を差し伸べると、ミユリさんが笑顔で飛び込んで来る。
そうさ。だから、この時だと思うんだ。
僕が、ミユリさんのTOになったのは。
第4章 長いインタビューの終わり
「その時、僕は、僕のホッペタで福建7号の拳を叩いてやったんだ!ね?ミユリさんも見てたでしょ?」
「ハイハイ。でも、そーゆーのは殴られたって逝うんですょ、普通は。しかし、お酒も飲まないのに、よくもまぁソンなセリフがポンポンと出ますょね。ホント、スポンジも投げたコトなさそうな方なのに。さ、赤チンが沁みますょ」
「ぎゃー」
結局、警察沙汰になる手前で全てが収まり、僕達は満身創痍で御屋敷に御帰宅する。
僕はバンドマン、ミユリさんは風俗メイド、そして、シノン大尉はチャイナドレスw
出迎える常連達も、流石に開いた口が塞がらズ、僕達のマシンガントークに圧倒される。
当初、シノン大尉が単身潜入し制圧する計画だったが、手強い相手に部下を呼び寄せる。
食材業者に変装した部下達は鮮魚ケースに短機関銃を忍ばせ厨房を制圧、大尉の合図で地下に音響閃光手榴弾を投げ込んで突入する。
その彼等の突破口を開き、貴重な時間を稼いだのがミユリさんのイカれた風俗メイドだ。
しかし"別のモノ"に手を伸ばすミユリさんの迫真の演技…って演技だょね?アレは?!
何だかイメチェンしそうだw
「いやー。ミユリさんの風俗メイド、最強だったね!このメイド服、またちょくちょく着て欲しいなー」
「そんなコト逝っても無駄です。もう二度と着ませんから!あら、何このドル札?え?チップ?テリィ様、後でビンタですから!」
「え?楽しみだ!でもね、ひとこと警告しておくょ。ミユリさんの気持ちは絶対変わる。また、必ずこのメイド服を着たくなるさ」
自信満々の僕にムキになるミユリさん。
「変わりません!だって、私の気持ちですょ」
「だから、変わるのさ」
「何を逝ってるの?私、ヲタクの神に違って金輪際、こんな風俗メイド服なんか…」
僕達の果てのない応酬を横目に、常連達が賭けをスタートw
え?今、オッズは 3対1 ?どっちが3 ?着ない方?うーん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そうそう。
最後に、僕を気に入ってくれた白髪&禿げのジャズメンの話もしなくちゃね。
彼等は、何と音響閃光弾が炸裂した後もブルースの演奏を止めなかったんだ。
だから、シノン大尉達が福建マフィアを制圧した時も、バックにはJAZZが流れてる。
名もなきジャズメンの、魂の演奏を耳にするコトが出来て、僕はホントに幸せ者だ。
今でも、彼等とは時折ステージを共にする。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、僕の"アキバ賞"受賞についてのスズキくんの長い、長いインタビューも、ようやく終盤だ。
「…昔、ある夜、アキバのメイドは、テリィ様に借りが出来たのです。その日から、私がみんなを代表して、テリィ様の御給仕をするコトになりました。ホント、世話の焼ける御主人様なのですが」
「良いお話ですね。ミユリさんの今のお話について、テリィさんからも一言お願いします」
「いつも、いつの日も、間違っているのは、常に僕でした。僕は、僕の好奇心を満たすために、イタズラに人の古傷に触れ、秘め事を暴いてきた。そんな僕は、どうして、いつも自分を正当化しようとするのだろう。君が、長い、長い溜息をつく度に、僕はどうして君に感謝し、謝罪する言葉を口にするコトが出来なかったのだろう。心から反省してる。もう遅いかもしれないけど…」
ところが、最後まで逝えない。
ミユリさんがキスで口を塞ぐから。
僕は、僕のヘタなキスが、アキバ中にライブで流れてるコトを気にしてる。
おしまい
今回は海外ドラマなどで見かける"闇カジノ"がテーマの過去ネタ編で、若かりし頃のコンビ、中華マフィア、亡命軍人、ジャズメンなどが登場しました。
TVで見聞きするNYの都市風景を秋葉原に当てはめつつ、ネタも整理して展開する描き方を心掛けています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。