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狼男と人魚姫2  作者: 渡邊裕多郎
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第四章 露呈・その3

       2




 翌日の日曜、俺は朝から静流に電話をした。楽しげに静流がこたえてくる。昨日のことはまるで悩んでいないらしい。俺たちは駅前で待ち合わせをした。


「お待たせ」


 俺が早めに駅で待っていたら、ワンピース姿の静流がやってきた。近づいてきてから俺の服を見て、小首をかしげる。


「秀人くん、その服、昨日のと違って、なんだか大きいみたいだけど」


「あ、これか。これ、実は昨日、強利様にもらったんだうよ」


 昨日のいっちょうらはイセエビの触角で穴だらけにされちまったからな。たぶんこれは強利の服だと思うが、あの人は俺より背が高いし体格もいい。俺が着ると、なんとなく、ダボっとした感じになる。――強利の名前を聞いた静流が不安そうな顔をした。


「強利様と会ったの? まさか、何かあったとか?」


「いや、そんなんじゃない。あの人、気さくな性格なんでな。俺のことを友達だと思ってくれてるらしくて、少し話をしただけだ」


「ふゥん。華麗羅様と柚香さんは?」


「なんか、一時的に帰国してるって話で、いなかった。そのうち戻ってくるんじゃないかな」


「そうなんだ」


「それから、俺も静流の事を親に話したぜ」


「あ、そうなの?」


「まァ、いろいろあってな。それから、ごめん。親父、静流の素性を知ってるんだ」


 静流がちょっと途惑ったような表情を見せた。


「それって、しゃべったの?」


「まァ、しゃべったって言ったら、しゃべっちまったんだけど。――強利様が、静流の家のことを調べててな。ほら、前の件で。それで、静流の親父さんとか、昨日の大臣のことも知ってたんだよ。親父はその話を聞いたんだ。だから俺も言うしかなくてさ」


「それじゃ、秀人くんのお父さんと、強利様が一緒に話をしたわけ?」


 静流が不思議そうに首をひねった。


「いや、大したことじゃないぜ。ほら、俺、強利様に『S&S』へこいって言われてるからさ。そのへんの関係で、父兄面談というか、そんな感じでな」


 適当なことを言って俺は誤魔化した。あの大臣のボディガードみたいなのと殺し合いを演じたとか、俺が最強の獣人類の家柄なんてことは、特に説明しようって気にもならなかった。俺はこっちの世界の住人である。


「じゃ、行こうか」


「どこへ行くの?」


「悪いけど、金はないから、デパートでおもしろいものでも見ようか」


「あ、ウィンドゥショッピングね」


 デパートのアクセサリー売り場で、俺は何気なく静流の横顔をながめた。楽しそうにイヤリングを見る静流の美貌。はじめて見たときより、さらに綺麗になったようだな。それとも、俺の頭にフィルターがかかっているのか? いや、そうではない。やっぱり、静流の美貌は人魚姫ならではのものだった。――考えていたら静流がこっちを見た。


「どうしたの?」


「いや、なんでもない」


「秀人くんって、最近、よく私の顔を見てるね。変なの」


 静流がほほ笑んだ。ふと気がつくと、静流の手が俺の手をにぎっている。少しひんやりして、それでいてやわらかい。


「あのさ。たとえば、静流が普通の人魚だったって想像してほしいんだけど」


 俺は小声で言ってみた。静流が笑顔で俺を見つめる。


「それ、普通の人間だったって想像するんじゃないの?」


「いや、普通の人魚でいい。どこかの王族とか、そんなんじゃなくて。それで、俺が狼男の王族の息子だったとしたら、どうする?」


「あ、昨日の反対の話?」


 静流が少し考えた。


「うーん、そうね。気にしないと思うけど」


 静流が返事をした。


「これが『S&S』だったら、そりゃ、問題もあるでしょうけど、『P&P』じゃ、そういうのって、気にしなくてもいい話だと思うし」


「だな」


「だから秀人くんも、そういうの、本当に気にしなくていいからね?」


 静流が言うと同時に、俺の手をにぎる力が少し増した。なんか勘違いしてるらしい。俺は苦笑した。


「そうだな。もう俺も気にするのやめた」


「うん。そうしてくれると私もうれしいから」


 その後、俺たちはデパートで何も買わずにあちこち見てまわり、本屋で雑誌を立ち読みして、学校の級友の話をし、TVのバラエティ番組がおもしろいだの、タレントの持ちネタの真似だのして盛りあがった。


 何かがあるわけでもないのに、俺は楽しくて仕方がなかった。

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