ウイルスのようなもの(+オゼ語り)
島に行こうと思った矢先。
誰か、というより多分ゼンに、がっしりと肩を掴まれる。
うわー捕まった~。ついさっき捕まらないようにって言ったのに捕まった~。
「オゼ、何処へ行くんですか。私との話がまだ終わっていないでしょう?」
「誰も君と話すなんて言っていないよ。」
案の定、振り返るとゼンが居て、あのキラキラした瞳を私に向けている。
おいおい近いな、うん近いぞ。距離感大丈夫?え?
「彼らから聞きましたよ。貴方と接触した時から頭がハッキリし始めたと!
私にまで隠す必要はないでしょう?早くその力を教えてください!」
「いや知らないから!私も謎なんだって頼む話を聞け」
「強さ以外に解消と浄化の能力まで持っているとは……!素晴らしい。
オゼ、やはり貴方は興味の尽きない存在だ。」
「うんありがとう。で、彼らから何か聞き出せたの?」
ここは無理やり話を変えよう。
そうしないとこいつの話止まんないし。何より私が解放されない。無理。
一度捕まるとかなりの間放してくれないんだよ。軽く五日はかかる。
もうあの質問攻めの毎日は味わいたくなくてさ……。
「先程、シダが話していたこと以外では……ああ、“ウイルス”の話ですかね。」
私の予想当たってた感じかな、これは。
やっぱりウイルス関係の現象だったか。
ウイルス系での一番の問題は、ウイルスを放つ存在が何なのか、だね。
今回は、完全新種の可能性が高いから……“人工生物”か“突然変異”、あとは“寄生虫”とか。
寄生虫などが主体なら、その寄生虫を排除すればいいのだけども。
うーん、どう調査していこうかね~。
「オゼにお願いがあります。」
頭上から、先程とは打って変わった声が聞こえ、顔を上げる。
案外、こいつも真面目な顔をするんだな、と思いながら頷く。
「貴方も思いついているとは思いますが、鮫の者達が居た島に向かい、手掛かりを探してみてください。」
「了解、もちろんそのつもり。ハクは念のため、世界の様子見といて。
じゃ、ラキとミダにも話してくるよ。」
ラキの部屋に向かおうとした時、私の横をラキが通り抜け……およ?
おい何を当たり前のように素通りしてるんだい、驚いて『およ』とかよくわからない事言っちゃったでしょう。
「話は聞いてた、で、俺は何したらいいんだ?」
私の後ろからミダが問いかけてくる。
よかったーラキみたいに無視しなくて。ミダはまだいい奴だな。
……いやそうでもないか。偶々か。
「やあミダ。お前は私と同じように、下で手掛かりを探してほしい。ラキ、お前も__」
「言われなくてもわかってる。さっさと行くよ。」
というと、ラキはさっさと扉を開け、下に降りてしまう。
あの子は毎日反抗期なのかしら。って、核が居たら言うだろうな。
いや言ってそうだな。ええその通りでございます。あいつはいつもあんな感じなんだよ。
軽く溜息が出たが、私もラキの後を追う。
よーし、下に来たよー。現世だよー。
私は二人(聞いていたのはミダだけ)に指示を出し、その背を見送った後、島へ向かう。
ちょっとゆったり飛びながら、見落としが無いように空から様子を見ていく。
島に着くまで時間かかるな~このスピードだと。
こういう時間を何に使うか、お分かりかな?
そう、紹介だ!!
せっかくね、創造神揃ったのに紹介できてなかったじゃない?
君に初めて会った時ぐらいに、会ったら紹介するわー、とも言ってたからさ。
お願い、紹介させて。
まずは私、オゼ。私は最初に生まれた創造神であり、存在でもあるよ。
それ故に、私は“始まり”を創りだした。
この世界よりも強いことは、ある意味の自慢だね。
強すぎて制御することになったのには、少しの理不尽さを感じたけど。
強さを表す器具で、私を計ろうとしたらその器具は壊れるね。あ、それは他の神も同じか。
うーん、どう表せばいいのかこの力……。
例えば人間が知恵をすべて使って、創り上げた神殺しの兵器ができても、制御を無くせば三秒ぐらいで壊せる。
別に制御しててもどうってことないけれどね!
技名とかは特にないかな。ああいうのをつけるのは人間ぐらいだよ。
あ、でもね、少し憧れはあるんだ。一回ぐらいやってみたいな、って。
(……今度やってみようかな。)
制御を無くした状態で本来の姿に戻ったら?……多分全てがつまらなくなってしまいそう。
否、つまらなかったんだ。分かりすぎる事は、面白くないし楽しくもない。
だからしていない。楽しくないのは得意ではないし、“美しく”も“醜く”もないから。
私が最も嫌いなものにはなりたくないんだよ。
ちなみに、得意な攻撃は物理だよ!魔法も得意だが、やっぱり物理だね。
攻撃の中の攻撃!いいじゃないか、獣らしいのも加わって最高なんだ。
ああそうだ、物理と言えばだよ。
数百年前の話になるけれど、とても楽しい戦いがあってね__
次回からバトル(過去)編になります。
六人分にしようかは悩み中です……。