創造神六人
カラカラカラ……
お、他三人がお帰りになったよ。
あいつらの報告によって、あの現象の脅威度が決まるようなもの。
不安と期待の混ざる心を抑え、私は広間へと向かった。
広間へ着くと、やっぱりラキが居ない。
あいつもミダと同じで、戻ってきたと思ったらすぐ自室へ入ってしまう。
どちらかというと、シダも二人の方に入るかな。インドア派なんだよね。
逆に私とハク、ゼンは、ほぼ外に出ている事が多い。
実際、広間にいるのは後者の三人だからね。
多分、このままだと三人とも出てこないから、呼び出しの鐘を鳴らしちゃいましょうか。
せーの!
ゴーーーーーン____
これで出てこなかったら部屋の扉破壊するか。
今回の件は重要だからね。サボる事は私が許さんよ。
「さてと、ハク、ゼン。お前達が神頼み解決してた時、攻撃してきた者はいなかったかい?」
本題へ突入だ。さて、なんと返してくる?
「攻撃ですか?」
「そうだ。“目の前が霞み、映るものを破壊したくなる”的な事を言う存在に会ったり……」
「……いえ。私は出会っていないですね。ゼンはどうです?」
「私も会っておりませんよ。それに、私達に攻撃してくる者など、そう居ないでしょう。」
いやー本当はそうなんだよね。私達に攻撃するってことは、世界に喧嘩を売るようなものだから。
なんだったら、攻撃してきた子達を世界から抹消することも出来るし。
私達の抹消は、最も惨い“死”。永遠の消滅。
二度と戻ってこれないからね。転生も再生も出来ない。意識だけが残って、世界が終わるまでそのまま。
嫌でしょう?生きているようで死んでいるなんて。
だからこそ、故意で私達に攻撃する生き物は居ないに等しい。
「それで、何故そのような事を聞くのです?オゼ。」
「ん?あー、実はね、島から直々のお願いされて行ってみたら、鮫の魚人達が襲い掛かってきたのよ。」
二人が、少し驚いたような顔をした。
「で、軽く遊んで、話聞いてみたら『目の前が霞んで、動くものに破壊衝動を覚えてしまう』とのことでね。今現在、その現象について調べてるのだよ。」
ハクはそれはそれは、と納得したようだけど、ゼンは現象に興味が湧いたのか、目をキラキラと輝かせている。
性格がまるわかりですね。こうもわかりやすいものなのか。
ちょっと話を変えよう。
昔は特にね、創造神って存在なのだから、もっと威厳があって冷静なのだろうと、予想されたんですよ。
けど実際は、自由だし騒がしいし(主にオゼ)極端だしで、本当に創造神様ですか、って思いっきり顔に出されたこともあってねぇ。
結局、神には威厳がある、とかは生き物たちの、特に人間たちの想像でしかないわけだ。
その予想と違ったからって、落胆されるのは理不尽だと思うのだけれど。そう思わないかい?
きっと君にも、私と同じような思いをしたことがあると思う。嫌だよね~。ああいう視線とか。
もしも、無い、と言えるのなら、私はそれが続くことを祈ろう。
はい元に戻します。
丁度シダが、鮫の子達を連れて戻ってきたからね。
「シダ、二人に説明を__」
「初めまして鮫の者達!早速ですがその現象とはどのようなものだったんです?
突発的なものでしたか?だとすれば素晴らしい!さあ早く教えてください!」
……この通り、こいつは興味が湧くと周り見えなくなるんだよ。
ええ?でも君、ここまで食い付いたことなかったじゃない。どうしたの、ツボに入っちゃったのか。
シダは超ドン引きしてるし。やめろーその敵意むき出しの顔をやめろー。
ハクはニコニコしてるよ。こいつはすぐニコニコして見守るから。
すっかり熱中しちゃったゼンの事は置いといて。
冷静、悪く言えば冷めてる二人と、現状の確認をすることにしました。
「じゃあ、シダ。お願い。」
「……まず、あの二人が言うには、“頭にも靄がかかったようになり、破壊衝動に忠実になっていた”。
なんの前触れもなく目の前が霞むらしいね。
オゼが見つけるタイミングが遅ければ、お互いに攻撃してしまっていたと思う。
位置も時間も、明確には覚えていないってさ。
その破壊衝動に、脳が蝕まれていく感覚だろうから、覚えていなくても無理は無いよ。
解放された理由も不明。ただ、オゼに触れた瞬間、意識がハッキリし始めたらしい。
一番の謎だね。」
私と接触したら靄が晴れた、と?なんだそれは。
そこの理由も探していかないとね。ゼンに捕まらないように行動しなきゃな。
あとの情報と言えば、位置とかはわからない、ってことか。うーん、やっぱり頼りはあの島だね。
予想としては、新種の魚を食べて、その魚の持つ“ウイルス”に感染したとかかな。
もしくは、新種の生き物。鳥類などが、現象を引き起こす鱗粉を体にまとっていて、その鳥類を食べてしまったとか。
しかしだよ、そこまで簡単に話が終わるとは思えない。
これは長期戦になりそうだね。まあ偶には、こんな事があってもいいでしょう。
楽しければそれでよし、だ。
私は少し口角を上げ、島の元へ向かおうとしていた。