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 よいしょ、家に着いたよ。

 空気が一斉に綺麗になるんだよね、鼻を通って脳に涼しい風が吹くんだ。家と呼んでる建物の中でも。

 ここに来て働いたりする子は、さっきも述べた通り色々理由があるからね。その少し黒い感情が清められる効果がある、透き通った空気、水、光で溢れてるというわけだ、ここは。

 私達がなるべく自然の環境で過ごしたかったから、広い庭には草木が芽吹いているし、川も湖もある。

 空も見えるし、鳥も飛んでる。魚だって泳いでるよ。この空間にしか生息しない者たちだけど。

 

 とまあ、ここは案外世界と変わらないのだ。

 違うところは、特別な生き物と、世界が見渡せる水面だとかがあるくらい。

 大きな屋敷の造りや、素材は世界と変わらないだろう?ほら、大したことないんだ。

 だからそんなキラキラした目で屋敷を見渡すな、鮫の子達よ。


 「珍しい造りでは無い筈だが……」

 「まさか!偉大なる創造神様のお住まいをこの目に映せたこと、光栄に思います!!」


 三人揃って興奮したように言ってきた。

 ここに来た者は、大体そういうんだよね……ただの家だよ?君たちの暮らす家と変わらないよ?

 正直、悪い気はしないからいいけどさ。

 

 よし、本題に戻そうか。

 どうやら、ハク、ラキ、ゼンの三人はまだ戻ってきていないみたいだったよ。、ミダとシダ……名前似てるな。

 えー、コホン。この二人は戻ってきてるらしい。

 ミダは絶対、自室に戻って鍵かけてるからな~。彼奴は本当に、一人好きなんだよ。

 取り敢えずシダに会いに行きますか。玄関に突っ立って居るのもあれだからね。

 三人についておいで、と指示し、シダがいるであろう“華間(カノマ)”に向かう。


 シダは結構言葉がきついし、すーぐ怒るし、私の扱いとか超雑だけど一番、命に優しい。

 あいつは“愛”を創った筈なんだけどね。なんで命に優しいのか、密かな謎だよ。

 聞いても『なんかわかんないけど、愛おしく思うんだよね』って、意味の分からない答えしかくれないし。

 いつか解明出来るといいですな。フフフ。

 なーんて考えてると、シダの部屋の前に着いた。早いな。


 「シダー?ちょいと頼みがあるんだけれど」



 …

 

 ……


 ………



 はい出ましたガン無視。

 常習犯め。今日も私を無視するか。部屋にいるのは分かってるんだよ。

 ドンドンと扉を殴るも、まったく反応なし。


 「あ、あのオゼ様……シダ様がお怒りに……」

 「平気だ。それより少し離れていて」


 あたふたする鮫の子達を少し離れさせ、私は思いっきり扉を蹴り飛ばした。


 バゴンッ!!


 良い音がして扉が吹っ飛ぶが、その扉は宙に浮いたまま動きが止まる。

 瞬間、グオンッと音を立てて私のほうへ吹っ飛んできたのだ。

 まあ慣れたものなのだがね。当然のようにそれを受け止める。


 「__オゼ。お前、何度言ったらその破壊癖を治すのさ」

 「お前が無視をしなくなったら、自然と無くなるだろうね!」

 「……」

 「そんな怖い顔をしないでおくれよ、シダ。君自身に原因があるんだから」

 「そうかな?いつだって冷静でいられないアンタに、原因があると思うけど」

 

 これが日常茶飯事だ。シダとの会話は大体こんな話。

 お前がどーの、君がどーのってほぼ毎日言い合ってるもんだから、ここで働いてるものには作業用音楽にされる始末。

 平和でいいことだけれどね。

 

 「……で、要は何?」


 チラリと鮫の子達の方を見て、シダがそう零す。


 「いやー実はね、不思議な現象に出会っちゃてさ」



 ・

 ・ 

 ・ 

 ・

 ・ 



 ちょっと省略したけど、軽く現象について話した。

 

 「ふーん。だからアンタから、海の匂いがしたんだね」

 「あ、そういえば匂い消してなかったよ」

 「……僕もその現象は知らないな。聞いたことないし」


 やっぱり知らないよね。

 もしかしたら、新種のウイルスか何かかもしれない。

 といっても、シダが神頼みを解決しに行ったときは、そんな現象は見なかったようだし。そこまで驚異的なものではないな。

 何かあったとしても、私達がどうとでもできるだろう。

 

 「ねえオゼ。この人達は別に、ここで働くこと__」

 「事実は事実だ」


 理由を聞いても尚、彼なりの判断は何処か命に甘い。

 

 「先ず、働く内容より先に情報を共有しよう。鮫の子達は、シダにその状況を詳しく教えてあげて」

 「わかりました!」


 鮫の子達のいいところは、必ず深く頭を下げてくれるところだ。

 清いところもいいね。そこまで長い仕事はさせなくてもいいかな。


 「じゃあ、僕はこの人達から話をジックリ聞いてみるよ。オゼは本の部屋で現象を調べてみて」

 「了解。頼むよ」


 ひらひらと手を振った後、本の部屋へ向かう。

 本の部屋はそのまま、本が置いてある部屋だよ。君たちの世界で言う“図書室”かな。

 この屋敷の本の部屋は便利でね、本を呼べば手元に来てくれるのだ。

 魔法とはまた違う。本に意思があるタイプのもの。

 だから雑に扱ったり、破いたりしちゃうと、もう中身を見せてくれなくなってしまう。

 修復するとまた見せてくれるのだが、捕まえるのに一苦労だ。

 

 要は丁寧に扱えということだね。

 ふむ……本に化けたら、シダの珍しい一面も間近で見れるのかな?

 ぶっきらぼうに見えて、本の埃を払っていたり、部屋の草木に必ず話しかけたり。

 そういう、きっと私達に見られることを嫌がることを、間近に見てみたいものだな。

 ニヤリと笑って、私は本の部屋に入った。

 

 

 


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