まずは目標
やあ。先程ぶりだね。
流れて飛んだあの後、私は一旦、核が生み出してくれた私たちの空間に戻ったわけなんだが。
そしたらさっき、ついさっき出てきた時より神頼みが増えてるんだよ。
何件かは他の皆が行ってくれたみたいだけど……ううむ。多いな。
とりあえず3件くらい解決していきますか。
まず一件目。
ええと?"コニアム火山"が噴火しそう……最初っから巨大な依頼だな。
あの火山はこの世界で1番大きいからね。噴火したら氷河期のようになってしまう。
それはそれであまり好まないし、生物が死んでしまうと楽しみが減っちゃうから、丁度いい。
二件目、三件目は解決後に確認するか。
早速行ってきます。
…
……
ごめんね少しの間黙っちゃって。
瞬時に移動する時は、流石に移動する場所を意識しなくちゃいけないのよ。
ここからはまた饒舌に話していくから。
さてさて、今私の目の前には巨大すぎる火山があるわけだ。
麓に立ってるんだけど、いやぁ暑いね。活性化しちゃってますよ。
動物達も危機を察してか全く居ないし。だからかな、鮮明にマグマの動く音が聞こえる。
もう少ししたら噴火するかなぁ〜とは思っていたが、まさかこんなに早いとはね。
依頼者は、ここから少し歩いた所にある小さな村の人間。
別に今から行ってくるよーって報告は要らないだろうから、真っすぐ向かって火山とお話してきますか。
翼を出して、ほい。空を飛んだんだけども、滅茶苦茶暑いよ。支障は無いのだけどね。
ムワッと熱風が吹いてきて顔にまとわりついてくる。
そりゃ鳥も飛ばない訳だ。こんがり美味しくなってしまう。
火口付近に近づけば、麓の数千倍の暑さが迫ってきた。火山よどうしたんだい、なにかあった?こんな急に熱が溜まるなんて、ストレスかい?
この星も私に似て気分屋だからなぁ。もしかしたら何かに熱中してるのかもね。
ようやく着いた火口の入口に立ち、中を覗き込む。
わお、結構マグマきてるね。これもう少し遅かったら大噴火だったぞ。
だがしかし、私が来たからにはそうはさせられない。
私はマグマの中へポンッと飛び降りた。
ゴホゴボと中心の方へ潜っていく。
あ、絶対真似しないでね。当たり前だけど、これ私だからできることだからね。
普通ならこの星の上位に位置する龍でも、鱗焼けちゃうから。
ちなみに、私からすると熱めのお風呂って感じです。
火山の中心に到着すると、私は溢れ出る血液のようなマグマを吸収していく。
これから何か生み出せるかなぁ。生み出すならどんな子にしようかな。
これだけの量のマグマなら、かなり強力な子が生まれるだろうし。
いっその事ドラゴンにでもしちゃう?それとも人外か……フフフ、考えるのは楽しいねぇ。
大体の量、危険が無いぐらいの量にマグマを減らしたので、私は吸収を止める。
グッと体を起こすと、簡単に空気に触れた。ちょっと減らしすぎたかな。
まあ、今後の事も考えると丁度良いだろう。
火山を見下ろすように外へ出ると、外の気温はグンッと下がっていた。
このぐらいの気温が、ここいら一帯の平均気温。過ごしやすい気温なのよ、本当はね。
さてと、次は地下に潜りますよ。
火山の上から真っすぐに降りると、地下への入り口は見えてくる。
私はその、地下へ向かう洞窟に入っていった。
ここはまだ暑い。流石にすぐには熱引かないよね。しゃあない。
何で地下に向かってるか?んー、ここの火山って大きいから、精霊が居るんだよ。居るというより宿っている、か。
その精霊さんに、原因と報告を聞かなきゃいけないんだ。こういう事態の時はね。私も久しぶりに会いたかったし。
最下層あたりに着いたよ。ここは暑そうな見た目なんだけど、暑くないんだ。
壁はマグマで赤くなってるし、床も黒くてゴツゴツした岩まみれなんだけど、そこまで暑くない。
「やっぱり来ましたか、オゼ様」
いかにも炎の精霊って容姿の精霊が、ふよふよと浮いている。
「お久しぶり。……あー、君名前無いの?前から思っていたんだけど」
そう、彼……?には名前が無いのだ。
自然に宿る精霊は大体そうなのである。例外も居るが。
「申し訳ありません、我々には名前は無いのです」
「まあ、そうだよね。……じゃあ、原因報告お願いするよ」
「はい。今現在、“地獄”にて祭りが開かれているのですが、その影響のようです」
地獄でお祭りってどういう事だ。全く。
「盛り上がった熱気で地の底が活性化した、と」
「そのようです」
「了解。他の神頼みを解決したら、地獄に顔出してくるよ」
「ありがとうございます」
地獄は暑いよりうるさいが勝つんだよ。
何か事情があって落ちちゃった者達は、まだ静かなほうなんだけど。地獄を任せてる奴らは、ほぼ全員うるさい。良く言えば明るい。
そのほぼに入る子なんて一人ぐらいしかいないし。
特に閻魔は最高にうるさいよ。けど良い奴だからね。一緒にいても苦にならない。
あいつと会うのも久しぶりだな。少し楽しみだ。
火山の精霊____名前がないのでそのまま呼ぶことにする____に別れを告げ、私は地上をイメージした。
ふっと視界が変わり、目に優しい緑が見える。
さ、二件目の内容は?
……ふむふむ。どうやら違う場所の木々からの依頼のようだ。『水が届かなくなり、若い者たちが枯れてしまいます。』って書いてある。
何処かで流れが止まっちゃったかな?取り敢えず向かってみましょう。
私は翼を広げた。