序章という名の紹介
ほんの思い付きだったんだよ。
私は世界を創り上げた、創造神って存在の一人なんですけど。
そんな創造主、創造神の私がいつものように世界を眺めていた時です。ふと、住民たちの神頼みが目に付いてしまいまして。
『あ、そうだ。暇だし神頼み聞いてみよう。暇つぶしになるかも知れない』
ってノリで、お助けしてみたんです。我ながら浅はかだなと思います。はい。
お察しの通り、それ以来お願いは来るわ神頼みは増えるわで、なかなか忙しくなってね。
他の創造主達や、私の友と共に、溜りに溜まったお願いやらを、一緒に消化していくことになったんですね。
ちなみに今から二千年前ぐらいの話なんだけど、未だお願いは尽きません。
気を取り直して、本日も元気に明るく神頼み消化していこうか!
おっと、ここで自己紹介した方がいいかな?うん、きっとそうだね。
コホン。
今私の思考と会話をしている君。初めまして、私はオゼというものだ。知ってると思うけど神だよ。創造主だ。
けれど、そこまで堅苦しい存在では無いからね。
あーよかった、話し相手が出来たね。これだけでもかなり気分転換が出来る。暇潰しにでもいいから、たまにここに来てくれ。以後よろしく頼むよ。
さて、言いたいことは言ったから……あとは、そうだ。少し前に言ってた私の仲間。"他の創造神"の紹介をしようじゃないか。
名前だけだからすぐ終わるよ。どうせ後で会うんだし、その時に詳しく話そう。
ええとね、私を含め創造神は六人居るよ。
他の奴らの名前は、ハク、ラキ、ミダ、ゼン、シダ、です。
全員二文字なのはたまたまという奇跡。特に意味は無いんじゃないだろうか。
はい、紹介終わり。
今丁度、神頼みという名のお願いの依頼人が見えたから。今はお終いね。
「オゼさん、お久しぶりです」
お上品にお辞儀しちゃってーもう、そんな仲でもないのに。
桃色と淡いピンクが見事に似合うこの神は春果という名前で、春を司る神様だ。
ちなみに、この世界には人外がたーくさんいるので、そこは注意だ。
「で、神様の神頼みって何かな?」
「……最近、この時期に雪が降るのです。真っ白な雪が」
「それは冬香満がいないからだろう?」
「その通りです。彼はフラっと出かけてから戻っておりません。そのせいで四季が狂うと何度も言っているのですが……。彼は自由すぎる故、直らないのです」
「あー。その彼を連れ戻せ、ということだね。分かった、気ままに探すよ」
「宜しくお願い致します」
これ少し時間かかりそうだな。他のお願いも聞きながら世界回るか。
颯爽とその場に別れを告げ、翼を出して空を飛ぶ。
神ですからね。なんでもできますよ。
そもそも私の本来の姿に、翼が生えてるからっていうのもあるけど。
まあまあ、その話はまた今度ね。ってさっきも言った気がする……あれ。
……じ、じゃあ春果達の治める“四季の国”について説明しようかな。
あの国は名前の通り、四季を祀る国で、春夏秋冬を司る神が治めている。
その神の誰かが体調崩したり、今回のように長期不在となると、四季が狂ってしまうんだ。
冬を司る冬香満は昔から自由気ままでね~。度々こういうことを起こすから、今回も特に驚かなかったよ。
自由なのはいいことだし、なにより“美しさ”に含まれるから許してる。
神に縛られない……美しいことだ。
夏を司る神は夏雫。秋を司る神は秋船という名前。
ちなみに。この世界の神様はほぼ性別がない。というよりも、どちらでもないのほうが正しいかな?
いわゆる“中性”というやつだ。勿論私達もだよ。
私は、顔の下半分を隠す、狼の口に似た少し平べったい仮面をつけて居るんだが……その理由の中には、中性的に見せる為、というものもある。
あとは単純に、さっきも言った本来の姿に寄せる為かな。
仮面の口を実際の口と繋ぎ、今はほぼ同体とかしているよ。
因みに、私の本来の姿は……ううん、何と言ったらいいのか。
狼型の獣人に、竜種の特徴と翼を混ぜたような姿、と言うのが正しさに近いだろう。
腰元には特徴的な牙の飾りをつけていて、身長は二メートルと少しかな。
今後見せることがあるだろうから、良かったら楽しみにしておいてくれ。
さて、次にこの世界そのものについての話をしよう。
説明が長いって?すまない、許してくれ。世界についての話で今回は最後だから。
まず、世界の始まりは計り知れないほど遠い昔のこと。
その頃、今は宇宙と名前のある空間は真っ白だった。
そんな空間にふと、歪みが生じた。
その歪みから、零れ落ちるように水__否、水のような姿の何かが這い出たのだ。
それこそが全ての創造主。私達創造神の核である。
要するに、私はその核に生み出された創造神第一号ってことだ。
核は私達を生み出すと、目の前で世界の元を作っていった。
最初は、全てが白い球体でね。それが六つ並んでいる状態だったよ。
その後核は、時空を捻り、私たちが世界を見つめられる空間を作った。
そして核は私たちに『あとは任せた』的なことを言って、歪みの中へ消えて行ってしまったのだ。
揃って私達は顔を見合わせ、身体が動くままに世界を作っていった。
始まりと終わりも、自然も、命も、神も。あと、愛もね。
それぞれ分かれて作ったもんだから、未だ六人とも、性格とか考えとかバラバラ。
だから逆にいいのかね。いやそんなことない、結構衝突するもの。怖い怖い。
と、こんな感じで出来上がった世界がここだよ。
勿論。それから今の姿へ広げて行ったのは、下に生きる生命なのだけど。
私達はその進化や流れを見つめながら、時折下に降りて話を聞いたり、手助けをしたりしてきたんだ。
そして、私達の中に暇が現れて……今に至る。
きっかけというのは何時訪れるのか、分からないものだね。つくづく思うよ。
……さて、それじゃあ行こうか。
話し相手が出来た事もまた、何かのきっかけになって居るんだろう。この先、とても楽しい事が起きる予感がする。
私はその流れに導かれ、流されて進むのだ。