彼女は中二病
「いっけね! 遅刻した!」
眩しい日光が俺を照らした。とても爽やかな日だった。爽やかすぎてつい、寝すぎちしまったけどな。
時刻はすでに十時を回っている。今日は土曜日。高校二年生であるこの俺、高橋龍太は彼女と待ち合わせをしていた。
約束の場所は俺の家から徒歩十五分離れた駅前で待ち合わせ時刻は十時。
駆け足で駅に到着すると扉の前で俺の彼女の橘荒田が立っていた。
荒田は高校一年生で俺より一つ下である。
荒田は黒髪でショートの髪型で背は低く、やや童顔である。
今日は青い半袖にショートパンツを着用していた。髪はゴムで結っていた。
「ごめん! 待ったか。荒田」
俺は頭を下げ、遅れてしまったことを荒田に謝った。
「くくく、我が使い魔として契約したのも関わらず、主人である我より遅れて到着するとはいい度胸だな」
荒田はむすっとした表情で中二病全開の発言をした。
そうそう。うちの彼女、中二病なんです。それも重度の。
「悪かったって。クレープ奢るから機嫌なおしてくれよ。な?」
両手を合わせ、謝るポーズを取り、そう提案した。
「ま、まぁ。ここは我の寛大な心に免じて許してやろう!」
荒田は顔を赤くし、そっぽを向いてそう言った。
多分、これで機嫌が良くなったな。
「良かった、ありがとう。それじゃ、行こうか」
「う、うん......」
俺と荒田は早速、デートを始めることにした。
たくさんのお店が立ち並んでいる少し狭めの通り道を歩いた。休日のためか人が多く、私服でデートをしているカップルや友人同士でショッピングを歩いている人もいる。
「龍太、龍太」
突然、ツンツンと俺の脇腹を荒田がつついてきた。
「どうした? 荒田」
「あそこに入ってみたい......」
荒田は小洒落たブティックを指差した。
「そうか、いいな。服を見たいんだな」
そういうと、荒田の表情が明るくなった。とても可愛らしい顔で思わずキュンとしそうになった。
「う、うん......は! 人類を嘲るためにはいろんな服を持っていて損はないからな。うん。そうだとも」
恥ずかしくなったのか再び荒田は中二病モードになった。こっちの方が恥ずかしいと思うのだが。
兎にも角にも俺たちはお店に入った。
ガラスのドアを押して入ると、美人の店員が出迎えてくれた。目の下には泣きぼくろがある。スラットしていてスタイルも良い。
「いらっしゃいませー」
結構、胸元が開いた服で思わずチラ見してしまった。
「いて!」
突如、荒田に脇腹に手刀を入れられた。
「何するんだよ、荒田!」
「べ、別に!」
ツンとそっぽを向いてしまった。おお、ちょっとツンデレっぽい仕草だ。
というか、まさかチラ見したのに気づいたか。
「ゆっくり見てくださいね!」
店員にそう言われ、俺たちは店の中を徘徊することにした。
この店には女性用の服しかないようである。様々な服が置かれていた。
「龍太、龍太! この服とこの服、どっちがいいかな?」
荒田は白いひらひらとした服と赤いオースドックスな服を手に持ち俺にどっちがいいか訊いてきた。
「うーん、どっちもいいと思うけど......どうせなら試着したらどうだ?」
「う、うん。分かった」
荒田は服を持って、試着室に移動した。俺は試着室の前でじっと待つことにした。
そして、一分後、試着室の扉が開き、荒田の姿が現れた。
「龍太。どうだろう?」
荒田は白いひらひらとした服を着ていた。荒田は華奢な体つきで今来ている服は少し子供っぽい感じだが、見事に荒田にマッチしている気がする。
というか、普通に可愛い。
「う、うん! 可愛いと思うぞ」
お世辞ではなく、心の底から俺はそう言った。
「そ、そうか! まぁ、仮の姿に着るものだけどな......えへへへ。それじゃ、次はこれを着てみるね」
荒田は再び試着すべく、試着室の扉を閉めた。
そして、また一分後、扉が開いた。
「ど、どうかな......?」
荒田は恥ずかしそうに赤いオーソドックスな服を着ている自分の姿を俺に見せた。
いつもと違った雰囲気の荒田もなかなか悪くないと今の荒田を見て感じた。
「こっちもいいな......」
「龍太はどっちがいいと思う?」
上目遣いで荒田が尋ねた。くそ、可愛いじゃないか。
「俺はどっちもいいと思う。よし! どっちも買おう!」
「ふぇ? お金が足りないよ」
俺はドンと胸に手を当てた。
「ええ、悪いよ......」
荒田は心底、申し訳なさそうな表情をし、オロオロしだした。
うん、やはり俺の彼女は可愛い。
「大丈夫。今日は少し多めにお金を持ってきたからな。それに......可愛い彼女のためだしな」
「な......」
荒田の顔がトマトのごとく、みるみると赤くなった。
「ふ、ふふふ......さすがは我が使い魔だ。いい心がけだな。ではお言葉に甘えるとするか」
まるでジョジョ立ちのようなポーズを決め、照れ隠しにそう言う荒田だった。
荒田の服を購入した後、俺たちは店を後にした。
「さてと、そろそろお昼ご飯でも食べようか。いつものところでいいか?」
「う、うん」
荒田が頷いた。デートの際に、ここから徒歩で十分ほどのイタリアンレストランをよく俺たちは利用している。
「ね、ねぇ......龍太」
「なんだ? 荒田」
荒田の方に目をやると、何やらモジモジとし始めた。トイレにでも行きたいのだろうか。
すると、手を俺に差し出してきた。
「こ、この手を握って欲しい。使い魔である龍太が私の手を握ってくれれば......アビリティ、愛の力により、私の魔力は二倍、いや三倍、いや、五倍にまで跳ね上がるだろう!」
すげぇな。シャアかよ。
「分かった。それでは、この使い魔であるこの龍太、主人である荒田様のために手を繋がさせていただきます」
俺は荒田の言う通り、彼女の手を握った。
「ん......」
荒田はものすごく恥ずかしそうにしていた。全く、SなのかMなのか、イマイチわからんやつだ。
「それじゃ、行こうか荒田」
「う、うん......」
そして、再び俺たちは楽しいデートを再開したのだった。




