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 時計の針が回っている。振り子が規則的に振れている。

 暖炉の火が音を立てた。

 そこは、広く裕福な家の一室だった。

 暖かい照明、柔らかい敷物。

 家族が一同揃って食卓を囲む場所。

 長いテーブルと散らばった椅子。食べかけの冷えた料理。飛び散った血のりがかかった皿。床に転がったまま動かない腹の大きな中年の男。

 暖炉の火がパチパチと音を立てていた。

 暖炉のそばにはのっぽな置時計が置いてある。頭に時計が設置されていて、胴体の振り子が規則的に揺れている。足もとには扉が付いており、子供一人がやっと入れそうな空間が中にある。

 そこの扉に顔を突っ伏して、まるでそこに頭を突っ込もうと扉に激突したかのように、尻を突き出してうつぶせに死んでいる中年の女がいた。頭からは血が流れ出て、首が90度上に曲がっていた。

 エンデレは呆然として前を見ていた。

 そこには、暖炉を背にした、大柄な男がいた。

 鉈を持って、昆虫のような表情をしてエンデレをじっと見ていた。

 エンデレはその姿形に見覚えがあった。

 「……あ……」

 エンデレは汗を噴き出しながら、じりじりと後ずさる。左手の甲の針が、ゆっくりと回っていた。

 男は動いていなかった。不気味なほどに微動もせずエンデレを見続けていた。暗いガラス玉のような眼がエンデレをずっと向いていた。

 エンデレは、少しずつ男と距離を開け続け、やがて窓に背をぶつけた。後ろを確認すると、外は霧で何も見えなかった。

 エンデレが前を向きかけると、一瞬だけ風切り音が聞こえた。

 エンデレの眼に最後に映ったのは、一瞬で迫りくる血にまみれた鉈の影だった。エンデレの頭が顔面から裂けて、中身が勢いよく噴き出た。

 エンデレは即死した。


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