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国王になるのを回避しようとしたけど、何故か妃になってしまった!

作者: 夜虎

 武力国家エデン。その国では力が全てであり、拳でも剣でも魔法でも強ければどんどん上にのし上がることが出来る。もちろん国のトップである国王=その国最強になる。そして、今私の目の前にいるのはこの国のトップである、ドルゴ国王陛下その人である。そして、本人はやる気満々だ。何にって?


「どうした、お前の方からかかってこいと言ったはずだが?」


 何故か行われている決闘にだ。そもそも何故こんなことになっているのかというと、長くなりそうなので要約すると、森に稼ぎに出ていた私→森でキメラを見つける→金になりそう!→討伐→その噂を聞いた国王陛下が興味を持った→城に呼び出され今に至る。


 ギルドの買取窓口に持って行った時に、盛大に驚かれたかと思ったら、キメラは出現するのが稀で、しかも騎士が最低5人はいないと、討伐出来ないと言われるほどに強い魔物らしい。騎士と言ってもこの国の騎士団は他国と比べてもレベルの高い集団だ。その集団の中の5人もいなければ討伐出来ないような魔物を一人で倒したとなれば、買取役員さんが驚くのも無理はない。


 国王陛下直々の呼び出しに断れるわけもなく、騎士様方に周りを固められ息苦しい中、城に来るとまさかの決闘。しかもあの優しさの欠片もないと言われ、慈悲や笑みなんて言葉はあの人の辞書にはないとまで言われている国王陛下と……。


 これで勝ったらアウト。でも負けるような試合をするということは、痛い思いをするわけで……。どうしよう、と悩んでいる訳です。でも本人やる気で、剣まで構えだした。


「お前からかかって来なければ、こちらから行くぞ?」


 ああ、国王陛下は本格的にやるつもりだ。私が何もしなければボコボコにやられるだろう。まったく、何でこんなことになったのかなあ?


「チッ、動かぬのならこちらから行く!」


 そう宣言した後、国王陛下は速いスピードでこっちに向かって剣を横に薙ぎ払ってきた。これは本気(マジ)だ。空気を切る音からしてヤバい! これはちょっと、ヤバいかも。

 私は、風魔法で竜巻を発生させ、国王陛下に一直線にぶつける。


 国王陛下は、それを素早く横に避けると、立ち止まり剣を縦に振った。それにより剣の波動が私に向かってくる。おそらく様子見なのだろう。


 精霊の祝福を発動させる。私が一言『消えろ』というと、国王陛下の剣の波動は私に当たる前に消えた。お返しとばかりに瞬間移動で国王陛下の背後にまわり、雷魔法で雷球を右手に出す。


 国王陛下は、私が後ろに周ったことにすぐに気が付くと、前に前進しようとした、が。


「遅い」


 もう私の右手は国王陛下の背中に当たっている。もちろん雷球も国王陛下に当たっている。


 国王陛下は短い悲鳴を上げて地面に倒れ伏した。そして、体はビクンビクンと痙攣している。おそらくしばらくしないと、立ち上がることは出来ないだろう。私の勝利だ。


「どうしよう、勝ってしまった……」


 いくら痛いのが嫌だからと言って国王陛下に勝ってしまったのはいただけない。国王陛下を倒すこと=次の国王が決まるという事なのだ。この国は実力主義、国王になりたければ、現国王陛下を倒す必要がある。国王陛下さえ倒してしまえば、頭が悪くとも国王は務まる。たとえ女だろうと、身分が低かろうと務まってしまうのだ。


 幸いなことに今この場で行われた決闘は国王陛下と私の当事者しか知らない。誰もこの場を見ていなければ、城の庭で国王陛下が私と決闘していたなんて知らないのだ。つまり、国王陛下と私が一切他者に洩らさなければ、国王の座がどうのこうの何て、なんとでもなるのだ。

 いっそ、今起こったことが全て夢だったのなら、とってもいいのだけれど……。


「国王陛下、あなたは夢を見ていました。女性と手合わせをする夢です。そう、あなたは理想の女性を夢に見たのです。己よりも強く、そして美しく凛とした佇まいの女性を。

 ですが、所詮それは夢の中の出来事。夢から覚めればそこには誰もおらず、手合わせした痕跡もない。そして女性の顔を思い出すことも叶わない」


 こんなもんかな。洗脳というか催眠術のような、まあ効いたらラッキーぐらいに思っておこう。美しいとか凛とした、なんて私に結びつくことない的外れなこと言っとけば、大丈夫でしょ。

 精霊の祝福で『一日前の状態に戻して』と言えば、すぐに戻る。後は、誰にもバレずにこの城から退散するだけ!



 ◇ ◇ ◇ 



 国王陛下と何故か決闘とした日から数週間が経った。今現在、困ったことが起きている。ギルドに国の騎士が堂々と待ち構えているのだ。それは数日前からだ。時間帯を変えてギルドに訪れているのだが、一向に騎士は退かない。まるで誰かを待ち構えているようにそこに突っ立っていた。

 こういう時の悪い勘というのは大抵当たるものだ。このままではいつまで経ってもギルドに入れず、私の収入はなし。このままだと生活もままならなくなる!


――ギルド前――


 私はローブを着て、フードを深くかぶり、少し俯き気味でギルドに入ろうとしていた。顔も見れない状態なら、騎士だって私だとは気づかないはず。

 と、思っていたんだけど……。


「すみません。国王陛下の命令で、怪しい人物を城へ連行しろ。とのことですので、城まで一緒に来ていただけますか?」


「何、この状況?」


 私は再び城に呼び戻されることとなった。そして……。


 フードは早々に剥がされ、無理やり騎士の方に膝をつくように押さえつけられる。まるで罪人のような扱いに抗議の声を上げたくなるのだが、ここで上げてしまえば、私の首と体はバイバイすることになるだろう。連れてこられた部屋はとても綺麗に整えられた部屋だった。

 ノックの音が聞こえドアを見ると、白い布を持ってメイドが入って来た。


「さあ、お召し替えをいたしましょう!」


 メイドの高らかな声が聞こえたと思うと、騎士は部屋から退散し、あっという間にドレスに着せ替えさせられていた。ついでに化粧も施され、宝石もあちこちに散りばめられ、まるでお姫様のようになった。


「私には似合わないと思うんだけど……」


「いいえ! そんなことはございません! とてもよくお似合いです!」


 お世辞にしては興奮しているなあ。と思っていると、メイドは部屋から去り、先ほどの騎士が入ってきて、扉に張り付いた。監視しているみたいだと思った。



 部屋で騎士と過ごすこと2時間以上。いつまでここに居なければならないのか。騎士に訊いても、そのままお待ちください。としか言わない。


「トイレに行かせてよ」


「そのままお待ちください」


 この通り。私が漏らしてもいいとでも思ってんの!? もう、キレてもいいよね!! これで私が漏らしたら、この騎士に後始末させてやるっ!! …………恥ずかしいからやっぱダメだわ。自分でする。

 って、これじゃあ、粗相する前提じゃない!! 絶対我慢してやる! ここで騎士を倒すなんてして刺激を与えたら、それこそ我慢の限界……ダムの崩壊だわ。


「話が通じる人はいないの!?」


「そのままお待ちください」


 何が、そのままお待ちください。よ!! もうこっちは何時間もこの部屋に閉じ込められてんの!! それが分かんないの!? 

 そこにまるで天の助けかのように扉が鳴る。


「失礼します。お時間でございます」


「よかった! 話の通じそうな人がいて……」


「どうかしましたか?」


「この騎士なんなの!? 何言っても、そのままお待ちください。しか言わないんだけど!! 親はどんな教育してんの!?」


 入ってきた人は嘘くさい笑顔から一転、頭を押さえ、またか。と小さく呟いた。と思ったら、笑顔に戻り謝ってきた。


「こちらの騎士が失礼しました。今は、王がお呼びですので、どうか怒りをお静め下さい」


「……王?」


 すっごく嫌な予感しかしない。抵抗する間もなく、トイレに行かせてと言う間もなく、また連行された。


 ◇ ◇ ◇ 


 連れてこられた場所は大きな扉の前、どこか訊く間もなく扉は開かれ、部屋の中が見える。今まで見てきた部屋や廊下などは比べものにならない程、飾られた大広間に大勢の人、人、人。そして、私に突き刺さる視線、視線、視線。何故あんな小娘が。みたいなのが聞こえてくるのは幻聴なんでしょうか。


「さあ、階段を下りて、真っ直ぐに進んでください」


 耳元でこそっと言われ、こんな見られている状況では、従うしかなく、渋々言うままに階段を下りていく。ヒールなんて履き慣れてないから、こけそう。少しよろけながら階段を下りていく。あと3段と言う所で、上手く足を降ろすことが出来なくて、足を捻り体勢が前へ傾く。


「大丈夫か?」


 傾いた体は何かに受け止められ、上の方からは聞いたことのある声が聞こえた。間違いなく、ドルゴ国王陛下その人だ。顔を見ると、決闘した時の真剣な顔とは違う、怖いくらいの甘い笑みを浮かべており、つい反射的に手を付いて離れようとするが、どうにも相手の方が力が強い。当たり前だ。私は体術など出来ないし、体を鍛えているわけではない。ドルゴ国王陛下に勝ったのだって、魔法や精霊の祝福を使ったからだ。

 と、それよりももっとヤバいことがある。もうダムが破裂しそうなのだ。絶対それだけは阻止しなくては。


「離してください」


 周りの目があるので小声で言っても、相手は全然聞いていなかった。本当に! ヤバいんだって!


「ああ、足が腫れているではないか。すぐ医師に見せよう」


「結構ですから、離してください。ちょっ!」


 やはり私の言葉を聞くことなく微笑を浮かべたと思ったら、私を横抱きにして歩き出した。ふざけないで! と言いたくなったが、すぐに周りに目があることを思い出し、口を閉じた。

 すると、何を思ったか口を耳元に当て、小声で話し始めた。


「そうだ。そのまま黙っていろ。黙って俺の傍に居ればいい」


 はあ? 何、この人。頭でも打ったんじゃないの?? まさか、私との決闘で打ち所が悪くて!? どうしよう! 治療代なんて払えるようなお金持ってない!


「どうした、そんな不安そうな顔をして。ああ、心配しなくともすぐに手を出すことはない。お前が大人しくしていればな」


 ああって何!? 心配しなくともって? 手を出すって、お金払わなかったら殴るってこと!? 痛いの嫌いなんですけど!!

 ドルゴ国王陛下は階段を登り切り、会場にいる人々を見渡せる位置に来ると高らかに言い放った。


「この場にいる者に告ぐ! 私はこの者を妃とする! 反対は許さん。文句がある奴はかかってこい」


 ドルゴ国王陛下のその一言で会場がざわざわと沸き立つ。貴族の令嬢はこそこそと話をし、オジサマはがっくりと口を開け、オバサマは倒れる始末。

 ・ ・ ・。はあ? 何、この状況。誰か説明プリーズ!


「さあ、行こうか。俺の妃」


 額に唇を落とし扉を開け堂々と退室。会場には固まっている人たち。そして、ドルゴ国王陛下の腕の中では、状況の変化に追い付けなくて固まっている私。




 数日後、まるで準備されていたかのように、この国では盛大な結婚式が執り行われ、一つしかなかった玉座の隣には真新しい玉座が並んだそうだ。


気が向いたら連載にして書くかもしれません。

もし見つけたら見て下さるとありがたいです。

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