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晩ご飯はどうしよう

 気がつけば時刻は、もう午後10時を回っていた。

 今日も泊まり込みだ。


 そう言えばまだ夕飯を食べていない。

 この時間ではファミリーレストランかコンビニぐらいしか選択肢はない。

 和泉は聡介と一緒にどこかへ行こうと思い姿を探したが、父親は管理官のところへ報告に行ってまだ戻らない。

 

 ふと白うさぎを見ると、戻ってきた時からずっと元気がなかったが、今もパソコンに向かいながらなんだか落ち込んだ様子で溜め息をついている。

 彼女が仕事に区切りをつけてノートパソコンのふたを閉めた時、

「ねぇ、送って行こうか? もうこんな時間だし」

 女好きで遊び人の名高い三枝が声をかけた。

「いえ、母が迎えにきてくれるので」

 ママのお迎えつきなんて、まるで幼稚園か学習塾に通う小学生だな。

 思ったことを口に出せば、後できっと聡介に言いつけられて怒られるだろう。

 和泉はぐっと我慢した。

「なんか疲れてるんじゃない? 元気ないよ」

 白うさぎは三枝を無視し、何故か和泉の方へ真っ直ぐに向かってきた。

「あの……」

 なんだ?

「やっぱりいいです。それじゃ、お先に失礼します」

 なんなんだ?

 彼女と入れ違いに聡介が戻ってきた。

「ねぇ聡さん。いつものところに晩ご飯食べに行きましょうよ」

 いつものところとは、和食メインのファミリーレストランである。

「ああ……ところで、稲葉は帰ったのか?」

 聡介は辺りを見回した。

「ええ、ついさっき。彼女、何かやらかしたんですか?」

「何かって、何だ?」

「だから、聡さんを怒らせるようなことを言ったりしたりしませんでした?」

「お前じゃあるまいし」

 なんだか納得のいかない返答だ。

「駿河、お前も一緒に行かないか?」

 聡介が声をかけると、彼はすくっと立ち上がる。

 

 和泉はふと不思議に思ったが、考えてみれば本当に人造人間な訳ではなく、ちゃんと血の通った人間なのだ。食事もするだろう。

 ところで最近父親は、この若い刑事がお気に入りのようだ。

 それはそうだろう。

 問題児を集めたような班員の中で、彼は唯一まともな刑事と言える。

 

 聡介があの若い女性刑事に関心を向けるとおもしろくないのに、何故か相手が駿河だと妙に納得してしまうというか、自分も弟ができたような気分になる。不思議だ。

 

 食事の間、聡介は仕事の絡まない世間話を駿河に振っていた。基本、彼は聞かれたことにしか答えないが、それでも無愛想というのではなく、ただ物静かな男なのだということがよくわかった。

 和泉はなんとなくこの若い刑事に興味を覚えた。

 

 聡介とコンビを組めなかったのはやはりおもしろくないが、この若い有望株の刑事と組めたのは良かったのかもしれない。明日からはもっと彼と事件の話を積極的にしよう。

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