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コールセンターの同僚達

 ビルの前に車を停めて様子を見ていると、仕事を終えたサラリーマンやOL達がぞくぞくと吐き出されてくる。

 因幡の白うさぎのおかげで、被害者のチームメイトで一番親しかったという女性達の顔は覚えている。

 今日は女子会か何かなのか、該当の3人の女性達が連れだって出てきた。

「こんばんは、お疲れ様」


 車を降りて女性達に近付くと、一番年長と思われる女性が和泉に気付いた。

「あ、昼間の刑事さん」

「川辺都さんのこと、少しお話を聞かせてもらえますか?」

 女性達は顔を見合わせた。

 それから、この近くでは誰かに話を聞かれるかもしれないからというので、少し離れたカフェに移動した。

 

 三人の女性はそれぞれ青木奈美、外山美佐子、葛西芳枝と名乗った。年齢は恐らく全員20代後半から30代中盤ぐらい。

「さっそくですが、川辺都さんについてご存知のことを教えていただけますか?」

 一番年長と思われる葛西という女性が答えて言った。

「川辺さんは確か、どこかのタレント事務所に所属してる女優さんなんですよね? ほらあの、ローカルでやってるケーブルテレビの番組に出てるって聞いたことあります。うちの仕事は副業としてやってた訳だから、突然休んだりとか、急に午後いなくなったりとかよくあって、井沢さんがよく文句言ってたわよね」

 その辺りの話は直属の上司である富樫から聞いたことと変わりはない。

「でも……こういっちゃなんだけど、川辺さんって芸能人の割にはあんまりオーラみたいなの感じなかったなぁ。庶民的で親しみやすいっていうんでしょうかね?」

 生前の被害者を知らない和泉だが、確かに顔写真を見る限りはどちらかと言えば地味な印象を受けた。

 ばっちりと今どきメイクをしていれば、確かにカメラ映りは良かったかもしれない。

「井沢さんというのは?」

「うちのチームのサブリーダーです。富樫さんのサポートをする立場で、彼女がスタッフの勤務シフト組んでいたんですよね。一応、業務量とスタッフの頭数でバランス取らないと、電話がつながらないって文句言われたりするもんですから、大変ですよ」

 言ってから葛西芳枝ははっ、と手で口元を押さえた。

「あ、でも、だからって川辺さんを憎んでいたとか、そういうことはないと思います」

「ええ、わかっていますよ」

 動機としては弱すぎる。

 勤怠の悪い社員を恨んでいちいち殺していたら、今頃どこの会社も殺人犯だらけだ。

「川辺さんと個人的に親しくしていた異性などは、ご存知ないですか?」

 三人の女性は顔を見合わせ、それから示し合わせたように、

「さぁ……職場ではあまり、そういう話はしませんでしたね」と答えた。

 嘘だな、と和泉は直感でそう思った。確実にそういう相手はいたのだろう。

 それもあまり公にはできないような。

 そのことが噂になって盛り上がっていたに違いない。


 だが、それを警察にバラすのは気が引ける。もしかしたら、身近な誰かに迷惑がかかるかもしれないから。

「噂ぐらいでもいいんです、誰々と親しそうだったとか……」

「小野寺さん……」ぽつり、と一番若そうな青木奈美が口にした。

「小野寺さん?」和泉はその名前を聞き逃さなかった。

 他の2人の女性がはっ、と一番右端に座っている青木奈美を見る。

「い、いや、あの……私が言ったなんて、絶対に言わないでくださいね?」

「もちろんです」


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