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体育会系です

 結衣は納得がいかない、という顔で聡介の後についてきた。

 乗ってきた車は少し歩いた場所のコインパーキングに停めてある。


 店から駐車場まで、若い新人女性刑事はムスッとして後をついてきた。

「……君は、警察学校で何を学んできた?」

 車に乗り込みながらシートベルトを締め、聡介は訊ねる。

「どうしてそんなことを?」

「上からものを言ったり、脅しつけるようなことを言えば、誰もが真実を話してくれると思っているなら、それはただの勘違いだ」

 若い女性刑事は唇を結んで黙っている。

「ただ、熱意だけは認める。君はただ一生懸命なだけだな」

 ふっ、と結衣の表情が緩んだ。

「いい機会だ。刑事の仕事っていうのがどんなものか、しっかり学ぶといい。男も女も関係ない、頑張っていい刑事になれ」

 思わず自分の娘にするように、聡介は腕を伸ばしてそっと彼女の頭を撫でた。



 嫌だなぁ、と和泉は内心で舌打ちしていた。

 所轄の刑事課にいた頃からずっと聡介とコンビを組んで、いくつもの難事件を解決してきた。それこそ、県警捜査1課の強行犯係も出し抜く勢いで、この二人がいれば県内は安泰だなどと自惚れるぐらいだ。


 実は捜査1課に異動が決まった時、喜びよりも不安の方が和泉は大きかった。

 聡介は階級的にも実績的にも管理職に就かされる可能性が高いからだ。彼が上司になれば当然、今までみたいにコンビを組んで捜査、という機会は減る。

 正直なところ、和泉にとって聡介以外の相棒など考えれらない。

 

 今までも何度か県警捜査1課の刑事と組んだことはあるが、どいつもこいつも使えない役立たずばかりだった。

 後で怒られるのは目に見えていたが、あまりにも我慢がならない時は、勝手に単独行動をしてきた。

 となると、監督不行き届きということで聡介が叱られていた。

 悪いと思いつつ、どんな時も自分を庇ってくれる父親に甘えていた。

 

 それなのに。

 

 やる気だけは人一倍だが、何かズレている所轄の若い女性刑事と組まされ、もう無理と泣きつくと、今度は人造人間と組まされた。

 僕は聡さんと組みたいんだ!!

 よりによって所轄のペーペーのお嬢ちゃんにその立場をかっさらわれるなんて!!

 

 その上、今度の相棒は何を考えているのかわからないサイボーグときた。

 一旦捜査本部に戻った和泉は外には出かけず、聞き込みの結果を報告書にまとめることにした。

 

 新しい相棒もやはり、パソコンに向かって黙々と作業している。

 その横顔をちらりと見て和泉は思った。

 表情は全くないが、顔立ちそのものは決して悪くない、いや、かなりイケメンの部類に入るだろう。

 

 ただし女性にはモテないだろうな。まるで冗談も通じなそうだし、そもそも会話が成立しなそうだ。 

 仕事上であれば必要な業務連絡はするが、プライベートではまったく話題が思いつかない。

 

 美人は3日で飽きるというが、どんなにイケメンでもこの男が相手では1分と持たないだろう。そんなことを考えながらふと時計を見ると午後6時を回っていた。

 今夜はどうせ本部に泊まり込みだろう。

 そう言えば着替えを持ってくるのを忘れていた。


 和泉が席を立とうとすると、

「どちらへ?」と無機質な声が聞こえてきた。

 顔は真っ直ぐにパソコンの方を向いたまま、駿河がそう訊ねていた。

「着替え忘れたから、取りに戻ろうかと思って」

「……ということは、高岡警部のご自宅までお送りすればよろしいのですね?」

 へ? と、和泉は思わず間抜けな声を出していた。

「えっと……もしかして、運転してくれるつもり?」

 はい、と簡潔な返事。

「別に、自分でするからいいよ」

「……以前にいた部署で、先輩が何かしら用事で捜査本部を抜ける際は、必ず後輩である自分が足になるべきだと教わりました」

 なんだそりゃ、と和泉は思ったが黙っていた。


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