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スキャンダル

「うちみたいな小さなプロダクションでもね、一応タレントの私生活にはそれなりに気を遣ってる訳なのよ。悪い方の噂で有名になったら他の子に迷惑じゃない? だからね、男ができたらすぐに報告してって言ってあるの。いつからかなぁ、右手の薬指にリングはめてきた訳。ちょっと高価なやつで、誰に買ってもらったの? って聞いたら自分で買ったなんて言ってたけど、それは嘘ね」

「その根拠は何ですか?」

「勘よ、勘」

 思わずちらりと隣に座っている駿河の横顔を見た。相変わらずの無表情だ。

「相手の男性が誰か、ご存知ですか?」

「さぁね。ただ、たいしたお金持ちではなさそうよ。だってミヤちゃん、相変わらず慎ましい暮らしぶりだったもの」

 この所長の読みが正しければ、被害者はごく平凡でささやかな幸せを送っていた家庭を壊した、ということか。

「他に彼女と対立していたとか、争っていた相手だとかは? タレント活動の方で」


 すると所長は大きな口を開けて笑った。

「そんな、東京に進出できるぐらいの大物ならともかく、ミヤちゃん程度のタレントを殺したところで、おいしい仕事なんて回ってきませんよ」

 そうかもしれない。

 知名度がそれほど高くない彼女が消えたところで、得をする人物がそういるとも思えない。


 となるとやはり痴情のもつれの線が濃厚か。

「ところで、お気を悪くなさらないでください。一昨日の午後9時から12時の間、どちらで何をなさっていましたか?」

 聡介が尋ねると所長は笑って、

「アリバイってやつ? いいわよ、教えてあげる。その日ならケーブルテレビ局の人と薬研堀通りの飲み屋で朝まで飲み明かしてたわ。マユちゃんも一緒よ。夜が明けるまで一歩も店の外に出ていないもの。だから、あたし達はシロよ。刑事さん」

 そうよね、マユちゃん。

 と、声をかけられたマユちゃんは黙って頷いた。

 

 アリバイの裏を取らねばなるまい。聡介は『ふじさわ』という店の名前を聞き出し、駿河は黙ってメモを取っていた。

「何か質問したいことはあるか?」

 聡介は駿河に声をかけた。

 彼はつとマユちゃんの方に視線を向け、それから

「あなたは川辺都さんから、親しくしていた男性の話を聞いたことがありますか?」と訊いた。マユちゃんは一瞬顔を曇らせた。が、すぐに笑顔を取り戻し、

「残念ですけど、川辺さんとはそこまで親しくありませんでしたので。プライベートなことは一切話したことがありません」

 そうですか、と短く答えてから「質問は以上です」駿河は口を閉ざした。

 

 聡介は礼を言って立ち上がった。部下の人造人間も倣う。

 事務所を出て車に乗り込み、聡介は駿河に訊ねた。

「どう思った?」

 すると彼は、

「まだ何とも言えません。しかし……」

「しかし?」

「マユちゃんと呼ばれていた女性は、何か隠しているような気がしました。本当は話したいけれど、上司の手前、黙っていなければならないと言ったような……」

 聡介は嬉しくなった。自分もまったく同じ感触を覚えたからだ。

「彼女からは、つつけばもう少し情報を得られるかもしれない」

 そう言った時、聡介の携帯電話が鳴りだした。和泉からだ。

『聡さん、今すぐ本部に戻ってきてください!!』

 彼にしてはめずらしく切羽詰まった、今にも泣き出しそうな声だった。


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