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困った仲間達:2

 年齢はおそらくそう変わらない、叩き上げのノンキャリアという点では共通しているが、いかつい外見といい、人相の悪さといい、どこまでも自分とは対照的なこの刑事は、どうやら聡介に対して少なからずライバル意識を燃やしているようだ。

「まだ何も言えないよ。現場に争った跡がないから、顔見知りの犯行だろうってことぐらいしか。それに監察医の報告を聞くまでは断定的なことは何もわからない」

 断定的なことは一切言わない。聡介は慎重だ。


「これは間違いなく痴情のもつれですよ。犯人は男だ」

 石原警部補は自信たっぷりに言った。

「どうしてそう思うんだ?」

「独り暮らしの若い女が、部屋に上げる相手なんて男に決まってるでしょう?」

「同性の友達かもしれないじゃないか」

「警部殿、よく現場を見たんですか? あちこちに男の存在を匂わせるものがありますよ」

 そう言われて改めて部屋の中を見回すと、確かにペアのマグカップなどお揃いの食器類が棚に並んでいた。

 洗面所はまだ見ていないが、歯ブラシも2本あるのかもしれない。

「死因は鈍器による脳挫傷、要するに撲殺です。男の力じゃなきゃ不可能でしょう」

「今どきの若い男は、女性よりも非力かもしれません。火事場の馬鹿力ってこともありますしね。現時点でいろいろ決めつけるのはどうかと思いますよ? 案外、犯人は女性のアームスリング優勝者だったりするかもしれません」

 そう言いながら、現場である部屋にやってきたのは和泉だった。

 彼の後ろには苦虫を噛み潰したような顔をした日下部が立っている。

「そんなこと……」

「あらゆる可能性を検討すべきだ、と言ってるんですよ。先入観を持って捜査に当たると見えるはずの真実も見えなくなる」

 そう若造に言いくるめられて、石原警部補はむすっと黙り込んだ。


「……と、うちの班長である高岡警部がそう言っています」

 こいつ……!!

 確かに和泉の言うこととまったく同じことを考えてはいたが、なんだか自分が所轄の刑事相手に対して悪いことをしているみたいで、気分が悪い。その時、

「おはよー、すっかり遅くなっちゃった」

 友永に『石油王子』と呼ばれていた三枝が姿を見せた。

 どの面下げて、と嫌味の一言も言ってやりたいところだが、どうせ響かない。

「班長、僕は何をすればいいの?」

 まったく悪びれる様子もなく三枝はニコニコしている。

「大人しくしててくれ」

 いっそのこと邪魔をしないでくれたらその方がよほどいい。

 すると驚いたことに三枝はオッケー、と黙ってただ現場を見渡している。素直と言えばそうだが、やる気がないと言えばそうなのかもしれない。


 これから捜査本部が立ち上がってこの男と組まされる気の毒な刑事は一体誰だろう? 聡介は内心で溜め息をついた。

 すると隣で忍び笑いが聞こえた。振り向くと友永だった。

「大変だな、班長さん。あんなののお守りをしなきゃならんとなると」

「困った子供の相手は慣れてるんだろう? もうまもなく佐伯南署に帳場が立つから、お前さんがあの王子様の面倒を見てくれ」

 聡介が言うと、元少年課の刑事はしまった、という表情を見せた。

 してやったりと内心でほくそ笑む。


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