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天国と地獄3

 さてさて閑話休題。


 説明の最中、遥か彼方へ昇天しかけていた俺の意識が町内を一周して帰ってきた頃に、ちょうど死神少女の説明は終わった。


「ええと……」

 馬耳東風モードを切り替えて、脳内にかすかに残っていた彼女の言葉を、パズルを組み立てるみたいに再構築(リビルド)し、そして理解する。


「なるほどね」

 ずいぶんと長く語っていたように思えたが要約してみればそれは単純至極なことで――、要するにだな――

「俺は何もしなくていいってことなのか?」

「そうとも言えるでしょう。ただあえて能動的に言うならば、しばらく人間界(ここ)で人間的基準において普通で日常的な生活を送っていただくとのことになります」


「ふぅん」


「長期的スパンでの記憶の恢復を待つというわけです」


「ふぅん」


「…………。なのです」


「ふぅん」


「……、まったく……。話を聞いていませんね?」

「ん、? ああ」

 おっとこれはうっかり、またもや馬耳東風モードになってしまったぜ。と、猛省しつつ――そうは聞こえないが猛省しつつ再々構築する。


「それで俺のすべきこと――つまりしなくていいことは分かったのだが、君らは何をするんだい?」


 まあ、何もやらないのが俺にとって一番なんだけどさ。けれど彼女はそんな俺の胸の内を忖度するまでは至らず、いや至っていたからこそなのかもしれないが、にまーっと楽しげに笑って形のいい唇に白魚のような指を当てると、

「秘密です」

 そう言った。


 秘密、ねえ。


 おそらくはこれまでの彼女らとの会話から察するに、俺はたぶんこの三人のうちで一番地位が高く、そしてエライようだから、きっと命令すれば悪魔少女も話さざるを得ないのだろうが、流石にそれは野暮かとやめた。


「では魔王様」

「どうした?」

「わたくしはここらでお暇させていただくことにいたします、貴方様さえよければ」

「勿論構わないぜ」

 というかとっとと去ってほしいくらいだ。


「ではまた。さあ行きましょうお嬢様」

「え? もう帰るのー?」

「ええ、今日のところは」

「ふーん。じゃあねーっ、まおー」

「はいはい」

 いいからさっさと去れ。

 と念じているうちに、さて、二人は廊下の向こうへ見えなくなった。


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