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「じゃがいも2個の真実」

「書いてあるからそれは正しい」なんて、このネット社会ではまやかしみたいなものなのですが、これが事、紙面に書いてあるものだったら、果たして全てがまやかしに見えるでしょうか?


「教科書に書いてあることが全て正しい」どうだろう?全て正しいようにも見えるがそうではないかもしれない。でも私たちはそれを正しいものだと仮定して現代社会を生きているのです。もしかしたら、その古文書や歴史的書物自体が、フィクションのたまものなのかもしれないのですが…。



昨日木曜、友人からある相談を受けました。思い詰めたような表情で彼女は遠い目をして言いました。


「カレー作ったんですよ、一箱全部。きっちり計って12皿分。でもね、12回も食べてないんですよ。せいぜい頑張って8皿分なんですよ。」と。(木曜という曜日が、彼女にそう言わせたのかもしれません。)


「はああああああ!!!!わかるうううーーー!!!!」


箱には確かに12皿分と書いてあります。しかし食べ始めると、12皿どころか、下手したら7皿分位しか量がないのです。私はかなりの小食なタイプですし、うちには大食の力士なんていません。もちろん、ルウによっては10皿分とか11皿分とか書いてありますが、そんなの今は議論に上げること自体間違っています。


お互い、思ってることは同じだったと安堵し、今まで幾度となく作っていたカレーについてありったけの知識をぶつけ合ったのです。帰り道で。



そこで私達はある仮説を立ててみることにしました。


①実は、カレーはメインではなく、他のおかずと一緒に出すものである。よって、1皿分がとても少ないとみなされている。


②カレーライスとして食べるのは8皿目までで、あとの4皿はカレーうどんとして薄めて食べる。


③食品会社が話を盛っちゃった。


答えはおのずと現れました。③が正解なのです。


例えば。ある食品会社だけ、素直に「6皿分(頑張れば8皿分)」と書くとします。すると消費者は「これだけ少ないんだな」と思い、他の12皿分のカレールウを買ってしまう恐れがあります。そして、一社だけ素直に書いてしまうと、たちまちそれが広まり、「やっぱそうだよね?」と消費者が立ち上がり、「2015カレー事変」勃発が危惧されるのです。



ここで、皿数はもちろんなのですが、材料にも注目してみましょう。


玉ねぎ3個、にんじん1本、じゃがいも2個。


……じゃがいも……2個……。


そもそも、じゃがいもってどうやって切ります?切り手側の個人差やじゃがいもの個体差にもあると思うのですが、大体8カット位じゃないですか?ましてや、ゴロゴロ野菜の~なんて作るなら、4カットが妥当だと思います。


思いだしてみてください。これ、12皿分ですよ?……へ??じゃがいも1粒ないし、運良ければ2粒。ゴロゴロ野菜の場合なんて、じゃがいも不在の事態も考えられるわけです。


ああ……悲劇……。


私はこの悲劇を回避するため、じゃがいもは4個以上入れるという荒技を身に付けてしまったほどです。ルウによっては「じゃがいも3個」というものもありますが、それとて、少ないことには変わりがないのです。


そして大事な「水の量」問題です。書いてあるのは1.5Lです。1.5Lで12皿分。一皿125ml……。これが妥当だと取るのか、少ないと取るのか、もはや論議すること自体ばからしいと思えてきます。


この「箱に書いてあるレシピ分量」ほど、あやふやで不透明な、しかし、絶対的な物などこの世にないのかもしれません。


それは、無限の可能性を秘めていて、常に私たちに新たな課題を提供してくれるものなのです。



彼女とは一通り「カレールウ談義」をかわし、駅で別れました。戦友はまた遠い目をして「カレーうどんにしようかな…」とポツリと言いました。その表情を、私は一生忘れることはないでしょう。


電車に乗り、最寄のスーパーにつき、あれこれカゴに入れてる時にそいつと目が合いました。


<今月のご奉仕品・ゴールデンカレー>


そっと箱裏を見ました。そこにはこう書いてありました。


【11皿分・じゃがいも中2個】


やれやれ……。


ご奉仕品のゴールデンカレーをカゴに入れた私は、その足で野菜売り場へ行き、バラ売りのじゃがいもを5個カゴに入れた。


心なしか、すがすがしい気持ちになったのは、わざわざここに書く必要もないでしょう。



挿絵(By みてみん)

(手作りインドカレーなり)


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