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白馬と姫  作者: カーネーション


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第93話『向こうから』

 ふたたび目を覚ましたとき、鼻先を冷たい風が吹き抜けていった。上体を起こして風の方向を見たら、窓が全開だった。夜の冷気が垂れ流しで、くしゃみも出てしまう。


「でも、わたし」


 窓なんて開けたっけ? 確か、部屋に戻ってすぐにベッドへ直行したはずだ。そのとき、窓は閉まっていた気がする。


 記憶はすっかり無いのに、窓はしっかり開いている。もしかしたら、窓の留め具がゆるんでいたりするのかも。何にしても寒いので窓を閉じなきゃと思った。


 わたしは窓に近づき、手を伸ばす。指が窓の取っ手にかかるかどうかというとき、体が後ろに戻された。わたしの力じゃない。腕が現れて、わたしの口をふさぐ。思わず、誰かの腕のなかでもがくけど、相手はびくともしない。


 ――誰? 何?


「どうか、お静かに」


 ひそめた声がくぐもって聞こえる。誰かを確かめようと顔をそらそうとしても、腕に固定されて身動きが取れない。


「あなたはジュリアを捜している……そうでしょう?」


 うなずきたいところだけど、何で知っているのだろう。それに今の状態で質問されても、革みたいな手袋で口をふさがれて答えられない。何とか、首を縦に振ってみることはできた。


「ある条件を呑んでくだされば、わたしがジュリアのもとに連れていって差し上げます。さあ、どういたしますか? 一緒に来ていただけますか?」


 “ある条件”というのは気になるけど、ジュリアに会えるなら大したことではない気がする。とにかく、首を縦に振って、意思表示をすると、巻きついていた腕が離れていった。


 窓を背にして頭を上げると、“誰か”の姿が見える。瞳以外を黒い布で覆い隠しているその姿は、忍者みたいだった。でも、服の上からでもわかる丸みは女性のものだ。人を脅すような凶器を持っていなくて安心した。


「あなたは誰ですか?」


 たずねてみたけど、少しだけつり上がった目を見つめていたら、わたしは懐かしさを感じた。

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