表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白馬と姫  作者: カーネーション


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/144

第90話『鉱山の街ゲオルカ』

 その後は大人しく馬車に揺さぶられながら、言い合いもなく(多少はあったけどにらまれるほどじゃない)、何とか無事に目的地へとたどり着いた。


 馬車を降りて、さっそく街へと入ったら、いかつい男たち3人が待ち構えていた。


 もしかして逃亡しているのがバレた? なんて、いろいろ考えていたのだけど、3人はどうも街の自警団らしかった。


 わたしたちだけではなく、通る人たちを引き止めて簡単な質問をしていく。検問というものらしい。旅の目的は観光か仕事かどうか。滞在日数はどのくらいか。聞かれることはそのくらいで、身分証の提示とかはなかった。


 わたしたちへの質問が終わると、口髭をたくわえたおじさんがため息を吐いた。


「すまんな、いつもはこんなことはしないんだが、最近、妙な事件が起きて警戒していてな」


「妙な事件?」


 サディアスがすかさず食いつく。


「ああ、ここらで旅人が誘拐される事件が起きてな。目撃者によれば、ごろつきの連中に無理やり連れていかれたらしい。だから、こんな検問をしているんだ。あんたたちも気をつけたほうがいい」


 そんなことを言われたら、大丈夫かなと不安になってしまう。街のなかを歩くのが恐くなってきた。


 でも、実際にゲオルカの街並みを見ると、不安なんてどこかへ吹き飛んでいってしまった。山のふもとに広がった街は人通りが多いし、何より目を引くのは市場だ。


 手前から奥にかけて上り坂になっている通りには、様々なものが売られていた。サディアスは目を輝かせながら説明してくれる。


 量りに乗せられた岩塩は食塩になるとか。陶土と呼ばれるものは胃腸薬や湿布薬の原料になるとか。それらが全部、鉱物から採れるものだとか。聞いてもいないのに話してくれる。


 わたしとしてみれば、鉱物よりも加工されたペンダントや指輪のほうに興味があった。宝石がはめこまれた小振りな指輪に意識が吸い寄せられていく。「欲しいなあ」と本音がこぼれる。


 しかし、女心をまったくわからないサディアスが「そんなものが何のたしになる?」とすぐに切ってきた。バカめ。


「たしになるとかそういうんじゃないの。こういうのを身につけると心が軽くなったり、とっても楽しくなったりするの。あんたにはわからないでしょうけどね」


 サディアスに理解されなくてもいい。だけど、めずらしく、口うるさい反論を封じこめられたようだ。「そうか」なんてうなずいてくる。


「もしかして、買ってくれるの?」


「買わん」


 何だ。少し期待してしまった。がっかりしながらも、サディアスだと思えば、落ちこむより怒りがやってくる。


 いつか、(アクセサリーを)買わせられなくても、言い負かしてやるから!


 そう気合いを入れて、歩いていたら、肩辺りに衝撃がやってきた。


「きゃっ」


 どうも前方から誰かとぶつかってしまったみたい。目を開けてみると、女の人と一瞬だけ目があった。彼女は目を見開いたかと思うと、「すみません!」と謝る。こちらが何かを言う前に走り去っていった。残されたのは肩の辺りの痛みだけ。


 わたしが肩に手を当てて痛んでいると、隣の男が黙っていなかった。「そんなところで、間抜け面をして突っ立っているからだ」と、鼻で笑う。


「間抜け面なんかしてない!」


 サディアスと話しているうちに、ぶつかった女性のことは忘れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ