表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/144

第9話『白いうさぎ』

 みやこなんだけど、クラウスさんが「ミャーコ様」と呼ぶのがおかしくて、まあいっかと思った。


「ミャーコ、ニーナが迷惑をかけなかっただろうか?」


 ニーナさんからの強くて鋭い視線が怖い。見なくてもわかる、きっとわたしをにらんでいるに違いないんだ。


「そんな、迷惑なんてとても」


「わたしのほうがかけられたわ」


「ニーナ」


 ジルベール様が低い声で呼ぶとニーナさんは口を閉ざした。お兄様には勝てないらしい。


「ミャーコ。あなたにはこの国の説明をしなければならないね」


「はい、知りたいです」


 何から知っていけばいいのかわからないけど、わたしはこの国を知りたい。帰れるかどうかもわからないから。


「我々の国は魔法の森に囲まれている。それは侵略を企む外の連中から身を守るためだ。そのために、森に出ると我々は獣に姿を変える。獣になれば、相手は油断するからね」


 つまり、クラウスさんが森に入ると白馬になるってことらしい。じゃあ、ニーナさんは何だろう?


「何よ」


「ニーナさんは何になるのかなって」


「ニーナは真っ白なうさぎだよ」


 ジルベール様が代わりに教えてくれた。白いうさぎ。白馬にくっついていた白いうさぎなんだ。ニーナさんの頬が赤く染まる。


「わたしだって好きでうさぎになっているんじゃないわよ。どうせならクラウスみたいに白馬とか、お兄様みたいに鳥とかのほうが良かったわ」


「何でだい? うさぎは可愛いじゃないか」


 ジルベール様の何気ないひとことに、ニーナさんはますます顔を鮮やかに赤く染める。


「ニーナ様はジルベール様のお言葉に弱いですからね」


「そうなんだ」


「何を納得しているのよ」


 また、にらまれちゃった。


「まあまあ、ニーナ、そこまでにしておきなさい」


 ジルベール様のひとことでその場の空気が一変した。さすがに王様のひとことは重い。


「ミャーコ、ここからが肝心だ。あなたにはこれから神子として生活してもらう」


「神子」


「そう、神子」


「神子って何をしたらいいんですか? あと、これから生活してもらうって、わたし、帰れないんですか?」


 次の言葉に期待した。帰れるってはっきり言ってほしかった。でも、ジルベール様は「申し訳ないが」と暗く告げた。そして、「あなたを帰らせるわけにはいかない」と続けた。


 もう二度と、もとの世界に帰れないなんて。わたしはどんな王様の言葉だって、そんなの信じたくなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ