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白馬と姫  作者: カーネーション


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88/144

第88話『幸せとか』

 またふたたび歩き出したとき、サディアスは深く息を吐いた。この気取った感じは話をする前触れだと思う。


「あのとき……」


 わたしの勘は当たった。


「え?」


「宿屋でおかみの話を聞いたとき、お前は無理やり笑っていた。何を考えていたんだ?」


 マージさんにはごまかせたのにサディアスには効果がなかったのか。長い付き合いだから仕方ないのかもしれない。別に無理して隠すような話でもないし、わたしは諦めてマリアさんとエリエの話をした。


「マージさんが幸せで良かった。でも、わたしの行動でふたりはどうなったのかなって、心配になったの。もし幸せじゃなかったらどうしようって。わたし、ふたりに償えるのかな?」


「今はどうにもできないだろう。お前には財力も生活能力も欠けているしな。だが、いずれ、様々なかたちで救えるときが来る。そのとき、全力でことに当たればいいだろう。それに女はやわじゃない。おかみのように自分の居場所を見つけるはずだ」


「だったらいいんだけど」


 どうか、マリアさんやエリエが幸せを見つけてくれたら良い。神様や仏様に願いごとなんてあまりしないんだけど、今日からは祈ってみようかなと思った。


 サディアスに話したら急に気が楽になって、いつもの調子が戻ってきた。


 歩きだし、サディアスは雑貨屋の前で立ち止まった。「待ってろ」と言われて大人しく待っていたら、サディアスは手にコンパスを持っていた。ゲオルカまでの道のりには欠かせないのかもしれない。こういうのを見ると、旅って感じがする。


「ていうか、コンパスを買うお金なんて持ってたの?」


「当たり前だろう。宿屋の宿泊代も俺が出した。そんなことも気づかなかったのか。あのおかみからはちゃっかり治療費も取られたしな」


「ウソ」


 やっぱり、商売だからタダとはいかないのか。世知辛い世の中だ。


「あ、お金あるならさ、何か買ってよ。可愛い髪飾りとか」


「買わん。無駄だ」


「ケチ」


「うるさい」


「ケチはモテないからね!」


「俺に“モテ”など無用だ」


 それでいいのかもしれない。女性に骨抜きにされるサディアスなんて似合わないし、考えるとすごく嫌な気分になる。


 ムカつくサディアスだけど、わたしにはこのくらいがちょうど良い。女性に関心がなくて、デリカシーの意味もたぶん知らないこの男の隣が、心地良かったりする。

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