表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白馬と姫  作者: カーネーション


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/144

第80話『地下室』

 おかみさんがサディアスの反対側を支えてくれるのは、助かる。この男、細身なくせに重いの。おかみさんの助けも借りて、3人がかりで階段を降りていく。


 最後の1段を降りたとき、おかみさんはわたしにそこで待つように言った。階段の裏側に回って何をするつもりなのだろう。


 気になったので、おかみさんについていく。そうしたら、おかみさんは積み上げられた木箱を1つずつ横にずらしていった。


 すっかり木箱がなくなった床にはじゅうたんが敷かれている。それは赤い花を絵柄にしたじゅうたんだった。ちょっと、神子の花に似ているかも。


 おかみさんはじゅうたんの端を指でつまんでめくりあげた。まるで、いつかの神殿の裏庭にあった隠れ通路みたいだ。床には切れ目がある。真ん中辺りに取っ手がついていて扉になっているのだろう。それを引くと、人がふたり分は入れる穴が現れた。


「ここにお入り」


 下りの階段があり、地下室となっているのだと思う。わたしは踏み入れるのを戸惑った。


 だって、ここに入ったとしても、追っ手はやってくる。追っ手に見つかったりしたら、無事ではいられない。もしかしたら、おかみさんも危険にさらされるかもしれないのだ。


「追っ手はわたしが追い払うから速く!」


「でも」


「大丈夫。宿屋のなかを調べたってここに気づいたりしないよ。わたしに任せなさいな!」


 おかみさんはすべてを引き受けてくれると言う。申し訳ないやら感謝やらでわたしはうなずくしかなかった。とにかく急がなくちゃならない。わたしは薄暗い階段を踏み外さないように地下室へと足を進めた。サディアスを支えながら。


 地下室には簡易ベッドがあり、サディアスはそこに寝かせた。地上のおかみさんに「大丈夫」と伝えられると、地下室の明かりはすべて失われてしまう。


 わたしは頼りになるものが欲しくて、サディアスの手を握ったままにしておいた。勝手な想像で冷たいと思っていた手はあたたかい。


「ねえ、大丈夫?」


「ああ」当の本人はたっぷり間を置いて、かすれた声を出す。絶対に大丈夫じゃない。


「ごはん、ちゃんと食べないからだよ。どうせ、寝てないんでしょ」


 答えは返ってこない。そして、この事実を伝えておこうと思った。


「クラウスさん、わたしたちを助けるためにわざとおとりになってくれたんだよ」


「どうだかな」


「また、そんなこと言って」


「ふん、俺が何を言っても……お前は、あいつを信じる。それでいいだろう。アホで……バカで……人を疑わない。それがお前だ」


 サディアスは途切れ途切れになりながらもそう言った。口では「あのね、それ悪口でしょ」と返したけど、不思議と嫌じゃなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ