表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/144

第8話『偉い人に会う』

 両開きの豪華な扉の前で、クラウスさんは足を止めた。ニーナさんはていねいな手つきで頭の飾りを直したりする。口元がゆるんでいて、とても楽しそう。


 残念なことにわたしの視線に気づくと、ニーナさんはまた不機嫌に戻ってしまった。


「あなた、くれぐれもお兄様の前でそそうなさらないようにね」


「そそう」


 念を押して言われると、そそうしてしまいそうで怖い。これから偉い人(ニーナさんのお兄様)に会うらしいし、どうしよう。


「異世界の御方、大丈夫ですよ。ジルベール様は穏やかな方ですし、固く構えないでください」


 クラウスさんが勇気の出る言葉をくれた。見守ってくれるような……そう、お父さんみたいに暖かいんだ。最近はあんまりお父さんの顔は見ていないけど、写真ではこんな感じだった。


「ありがとう、クラウスさん」


「いえ」


 笑顔も雲ひとつない青空のようにさわやか。わたしの頬もほころんでしまう。そうだ。クラウスさんがいるもの大丈夫。そう思ったら、不安も緊張感も抜け落ちていた。


 謁見の間と呼ばれるそこは、庶民には触れられない神聖な感じがする。玉座まで真っ直ぐに赤じゅうたんが敷かれているの。


 本当に偉い人の部屋には赤じゅうたんが敷かれているんだ。なんて感心していると、やっぱりクラウスさんに置いていかれてしまう。慌てて早足で追いついた。


 王様――ジルベール様は髭だらけだった。いったい歳はいくつなんだろうと思ってしまうくらい。


 ふわふわのファーがついた真っ赤なマントを肩にかけている。髭が真っ白だったらサンタさんみたいかも。王冠には赤とか緑とか大きな宝石が輝いていた。


「異世界の御方、よく参られた」


「えっと、お招きいただきありがとうございます?」


 ちゃんと応えられたかなと思って、クラウスさんの顔を見ると穏やかな目で包まれた。うなずいてもらうと自信がつく。ジルベール様の笑う声が聞こえた。


「固い言葉はやめようか。クラウスもニーナもよくやってくれたね」


「お兄様」


 ニーナさんは明らかにお兄様の前だと態度が変わるみたい。胸の前で指を組んで、うっとりとお兄様を眺めている。


「異世界の御方、あなたの名前をお聞きしてもいいかな?」


 異世界だし、プライバシーも関係ないかと思って。


「はい、えっと、倉持 都と言います」


 くらもちみやこという普通の名前を告げたら、ジルベール様は髭を揺らして笑ってくれた。みやこが名前で倉持が名字だということを説明したら、「ミャーコ」と呼ばれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ