表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白馬と姫  作者: カーネーション


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/144

第74話『赤猫の侍女頭』

 赤猫の宿屋に戻ると、ちょうどおかみさんとクラウスさんが談笑しているところだった。クラウスさんはわたしとサディアスに気づくと、苦笑で出迎えてくれる。


「お帰りなさい、フォル。やはり、サディアスと一緒でしたか」


「ごめんなさい」


 そういえば、クラウスさんを誘うのをすっかり忘れていた。すべてをひっくるめて謝罪すると、「いえ、部屋にいらっしゃらなくて心配しただけですから」なんて言われてしまう。


 心配をかけたことが申し訳なくて、また1段と深く、頭を下げるしかない。それだけで優しいクラウスさんは許してくれた。


 謝罪が終わると、サディアスはおかみさんに向かって「そんなことより、あんたに聞きたいことがある」と告げた。


 かなり唐突だったけど、おかみさんは笑顔を崩さずに、「何だい?」とほがらかに応える。


 逆に、サディアスは眉間に力を入れたみたいだった。人を殺すんじゃないかってくらい鋭い目をするから、こちらはひやひやした。


「あんたは、レーコのことを知っているな?」


「レーコ? 誰だい?」


「あんたが森のなかから来たことは知っている。ある事件のせいでこちらにやってきたことも。あんたは侍女頭だったのだろう?」


「ああ、確かに侍女頭だったよ。だけど、レーコだとか、そんなの誰だか知らないね」


「あんたが神子の名を知らないはずがない」


「さあね、そんな昔のはなし……忘れちまったよ」


 おかみさんは窓の外に目を向ける。たぶん、話したくないのだろう。サディアスはまだ話し足りないのか、口を開けようとした。


 だけど、「さあさ、お腹空いたろ?」とおかみさんのほうが早かった。さっさと部屋の奥に引っこんでしまう。


 そろそろ日がかげってきていた。サディアスのうつむいた顔は影になって見えなくなった。


「クラウス。お前はここのおかみについて知っていたのだろう? だから、あえて、この宿屋を選んだ」


 サディアスったら何を言うの! と思ったけど、まだ彼はクラウスさんに対して疑問を持っているらしい。


「何のことだ?」


「お前が何をたくらんでいるのか知らんが、俺は思い通りにはならない」


 サディアスは言葉を残して、階段へと歩いていってしまう。


「待ってよ、サディアス。夕食は?」


「いらん」


「えっ、ちょっと!」


 サディアスはこちらを振り返ることもない。わたしの制止なんかものともしないで、2階の部屋に戻ったようだった。扉が強く閉まる音が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ