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第7話『城と兵士』

 ずいぶんと長い時間かかってお城の前に着いた。やっぱり王様がいるお城は、分厚くてがんじょうな城壁に守られているみたい。


 門の両脇には、鉄のかたまりを全身にまとった兵士さんが立っていた。鎧にかぶとまでを身につけて、重くないのかなと思う。


 お城に入るには門を通過しなくてはならなくて、何か通るのが緊張する。意味もなくスカートの裾を直したりして。


「ニーナ様、クラウス様、お帰りなさい!」


 意外だった。兵士さんはとても嬉しそうにクラウスさんとニーナさんに声をかけた。でも、わたしが通るとき、兵士さんたちは何にもしゃべらなかった。人形みたいにそこから動かないの。


 わたしも通っていいのかなと思ったけど、大丈夫だった。存在していないみたいに華麗にスルー。兵士さんに向けて頭を下げてみたけど、何にもしゃべってくれなかった。


 門を通過したら、ずらっと右と左に並んだ兵士さんたちがわたしたちを出迎えたの。


 みんな鎧とかぶとを身につけているから顔がわからない。


「お帰りなさい!」


 また兵士さんたちが温かく迎えてくれる。クラウスさんが「ジルベール様に知らせてくれ」と命令すると、兵士さんのひとりがお城に入っていった。


 クラウスさんとニーナさんは兵士さんたちの間を当然のように歩いていく。このふたりってすごいんだ。


 わたしも置いていかれるのが嫌で、素早く足を動かした。


 ようやく解かれた緊張感にホッとしたと思ったら、はちみつ色のエントランスが待ち構えていた。


 天井を見上げれば、大きく枝の手を広げた木の絵が描かれているの。枝には小鳥が羽を休めてる。白馬の絵もあって、もしかしたら、クラウスさんの絵なのかな。


 だとしたら、クラウスさんってものすごい人なのかも。天井の絵に目を奪われていたら、ニーナさんが現実に戻してくれた。


「ボーッとしない! あなたのせいでどれだけ時間を無駄にしていると思っているの!」


「ごめんなさい」


 ニーナさんの言う通りだった。でも、目に入るすべてが綺麗なんだもの。感動しちゃうんだもの。もし、それがダメだって言うなら、あんまり見ないようにしなきゃ。


 それからはうつむき加減でお城のなかを歩いた。よく磨かれた床を見ても、全然おもしろくなかった。

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