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第4話『白馬の変化』

 何でこんなに簡単に?


 つるがなくなっちゃうと、森のトンネルの先が見えた。


 すぐににぎやかな音が聞こえてきたの。葉っぱや木でできた看板が下がったお店。煙の上がった屋台は食べ物が売っているのかもしれない。大通りを人々が歩いていく。森のなかに街があるんだ。


 白馬が引き返してきて、わたしの後ろに回る。まるで先に進めというように頭を下ろしてすぐに上げた。


「行っていいの?」


 行ってみたいっていう気持ちがみるみるわいてきて、わたしは1歩前に踏み出した。ちょうどネットがあった境を越える。


 そうしたら、「きゃっ」足元から勢いよく風が吹いてきた。スカートの裾がめくり上がるほどの強い風。手で押さえてみたけど、誰かに見られたら最悪。


 風がやむと、髪の毛とスカートが降りてきた。無事にこちら側に来れたみたい。白馬のほうを見てみたら、そちらも境を越えようとしていた。白うさぎももれなく着いてくる。


 そして、わたしは見てしまったんだ。白馬の体が時間をかけて徐々に変わっていくの。


 わたしの胸くらいしかなかった身長が、木に届いてしまうほどに伸びていく。前足が降りてきて筋肉質な腕になる。それがマッチョなの。シャツを纏い、ベストが現れてその上にジャケットを羽織った。後ろ足もすらっと伸びて、現れたズボンが下半身を隠した。


 でも、一番びっくりしたのは、突き出た鼻先と口が奥に引っこんで人の顔になったこと。しかも、彫りが深くて黒い瞳なの。髪の毛は白馬の毛並みと同じように透き通っていた。きっと触ったら、さらさらで最高だと思う。


「綺麗」


 男の人に綺麗というのは変かもしれないけど、これだけ整った顔はもう芸術品でしょ。


「お褒めいただき、光栄です。異世界の御方」


 白馬だった男の人はわざわざ膝をついてわたしに頭を下げた。


 えっと、わたし相手にこんなことされても困る。それに何より「異世界の御方」って何だろ? あと、外人さんなのに日本語をしゃべれるんだと嬉しくなった。夢は何でもありなんだ。


「あの、えっと、何聞けばいいんだろ?」


「戸惑うのも無理はありません。あなたは突然、この世界にいらっしゃったのです。私はあなたの護衛を勤めさせていただくクラウス・ヴォルグフートです。お見知りおきを」


 本当に「お見知りおきを」って使うんだ。クラウスさんはどうやらわたしの護衛らしい。護衛ってことは、わたし危ないの?


「クラウスさん。ここってわたしの夢の中なのに、そんなに危ないの?」


「は?」


 クラウスさんは顎を落とした。え、何か、わたし間違った。それともウザイことした?


「バカじゃないの、あなた」


 今度は女の子の声が聞こえてきた。

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