第39話『はじめての夜』
神子になってはじめての夜。ようやく椅子から立ち上がることができた。とりあえず、部屋を出るまではヴェールを外してはいけないらしい。でも、すごくヴェールのなかはあっついの。
ヴェールを外したときにはクラウスさんが待ってくれていた。
「お疲れ様です」
「クラウスさんもお疲れ様です」
「さあ、行きましょうか」
「はい」
ふたりきりでまだ見慣れない道を歩く。通路の同じ間隔で燭台が点っていて、クラウスさんの背中がはっきりと見えた。そっか。ヴェールをしていたから、はっきりとクラウスさんの姿を見たのは久しぶりだ。
とても広い背中。頼りがいのある背中ってこういうことだと思う。ずっと見つめた。
神子の部屋まで連れていってくれると、クラウスさんは扉を開いてくれた。この先に入ったら、クラウスさんはすぐにいなくなってしまうはずだ。部屋にまでついてこないだろう。わたしでもちゃんとレディとして扱ってくれるんだから。
どうしてもクラウスさんに言っておきたいことがあった。神子になる前から考えていたんだけど、顔を合わせる機会はなくて、今になってしまった。
「クラウスさん」
「はい?」
「今まで本当にありがとうございます」
頭を深く下げる。クラウスさんが「大丈夫」と言ってくれなかったら、今日だって心細かった。
「それと、これからもよろしくお願いします!」
もうひとつ深く頭を下げたら、「ミヤコ様」と優しい声が降ってきた。
「わたしのほうこそ、これからもよろしくお願いしますね」
顔を上げたらクラウスさんの笑顔が広がっていて、わたしも嬉しくなった。神子になってもクラウスさんはそばにいてくれる。相変わらず優しく包みこんでくれるんだ。




