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白馬と姫  作者: カーネーション


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第37話『神子の神殿』

 神殿のなかは、とても静かだった。これだけ静かなら、声をひそめてみても何を言っているかはわかるだろうし、慎重に歩いても足音が聞こえてしまうと思う。


 神官と呼ばれる人の後についてつるつるに磨かれた通路を歩く。ここは外の音が聞こえない。


 通路の扉の先には、ひとりで閉じこもって祈りを捧げる部屋とか、悩める人の話を聞く部屋とか、公人を招く部屋とかあるらしい。


 でも、今のわたしが行かなきゃいけないのは儀式をする部屋なので、寄り道はしない。裸足にはかなり冷たい床の上を集中して進んだ。


 通路の突き当たりを左に行くと、広々とした部屋に着いた。また赤いじゅうたんが部屋の奥まで続いている。その先には祭壇を後ろにひかえて待つ人のかたちがあった。


 先を歩いていた神官の人は横にずれて、手を祭壇に向けた。後はひとりで行くしかない。もう驚くことも戸惑うこともない。落ち着いて歩いた。


「ミヤコ・クラモチ様。よくおいでくださいました」


 祭壇の前にいた人もわたしと同じようにヴェールで顔を隠していた。この台詞もマリアさんから練習していたし、「はい」と答えるだけでよかった。


「わたくしは神官長のイルムと申します」


「イルム神官長さん」


 声はくぐもっているけど、ヴェールの下に落ちるくらい低い。きっと、イルム神官長さんは男の人なのだと思う。


「さあ、お手を」


 イルムさんは長い丈のそでから肌色の手を差し出した。わたしは練習していた通りに、自分の手をそでから出して、相手の手と重ねる。言い伝えでは力のようなものを交換する儀式なんだけど、実際は手を重ねているだけなんだ。


 しばらくは黙ってそのままにしていた。


「いいでしょう。あなたを正式な神子と認めます」


 実感なんてまったくないけど、正式な神子となったらしい。イルムさんの言葉を合図にして、神官の人たちがわたしに向かって赤い花びらを投げつけてくる。これは祝福の意味だってサディアスがえらそうに言っていたっけ。

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