第33話『悪い噂』
しばらくして、テーブルの上にティーセットが並んだ。丸いカップのふちにはつるの模様が描かれている。小さな花びらが散りばめられたソーサーも可愛らしい。
思わず、「可愛い」とつぶやいていたら、占い師さんは声に出して笑った。
「そう、嬉しい。これはわたしのお気に入りなの」
黒いヴェールや服に隠れてはいても、口元に手をそえるしぐさはしなやかに見える。実は、お嬢様育ちだったりするのかもしれない。
観察はそこまでにして、まずはこちらから声をかけることにした。
「あの」
「まずは自己紹介しなくちゃね。わたしはルルよ」
「ルルさん」
「かしこまらなくていいよ、ミャーコ」
「どうして、わたしの名前を?」
「みーんな噂しているからね」
ルルさんは世話係の人と情報を交換しあっているみたいで、最近ではわたしの話が中心になっているそう。
噂と聞いて、元の世界でのことを思い出した。わたしの噂で良い話なんか1個もなかった。優等生気取りでつまんないやつとか、ノリが悪いとか、ウザイとか。そんなのばかり。ここの世界でも同じだと思う。
「あんまりいい噂じゃないんでしょう?」
「そうかな。あのサディアスと仲良くしてるって噂が多いけど。それって悪い噂?」
「悪いです! サディアスなんかと仲良くないもの」
「あはは……そっか。みんなにも言っておくよ」
サディアスなんかと仲良くなれたら、どんな変な人とでも仲良くなれる気がする。それくらいハードルが高い。噂の話はもういいから違う話にしてほしくて、本題に入ることにした。
「ルルさんは……わたしに何の用なんですか?」
「ただ会いたかったじゃダメ?」
「いえ、ダメだなんてそんな」ちょっとイラッとしたけど。
「嘘をつかなくていーよ。ミャーコは会いたくなかったでしょ?」
「……少しは」
「正直ね」
素直な気持ちを言葉にしたら嫌われると思ったのに、ルルさんは夏の日差しのようにからっと笑った。ヴェールで顔が隠されているのに、満面で笑ってくれていると思える。肩に入っていた力が一気に抜けた。




