第29話『神子の感じ』
無表情って無感情なのかな? そう思ってずっと眺めていたら、サディアスの表情が不機嫌にゆがむ。眉を寄せるだけだけど、最近ではわずかな表情の違いでも怒っているとわかる。
「人の顔をずっと見ているのは不快に思われる。神子でなくても、やめろ」
「あ、ごめん」
「本当にお前は神子になるという自覚が足らないな」
そうかもしれない。儀式が近づいてきているのに、自分が神子になるなんて信じられない。神子になったらわたしはどうなっちゃうんだろう?
「神子って、どんな感じ?」
「知るか」
「そうだけどさー、どんな感じだと思う?」
「お前の世界には女王とか妃とかいないのか?」
「いらっしゃるよ。すっごいおしとやかでおだやかで、みんな大好き」
「じゃあ、そんな感じだろ」
全然、真剣に答えてくれていないのはわかった。でも、女王や妃をお手本にすれば、神子らしく振る舞えるのかもしれない。
「何かわかったかも」
「ふん、お前の『わかった』は当てにならんな」
「本当にえらそう。同じ年のくせに」
「年齢など当てにならん。バカはいくら年を重ねてもバカだ」
「あー、はいはい」
サディアスと話していると、まるで、ずいぶん昔からの喧嘩相手みたいな気がしてしまう。アホみたいに言い合って、ぶつけて、それの繰り返し。
「おい、歴代の王の名前くらいは覚えただろうな?」
「えっ? それ試験に出ないでしょ」
「俺が教えたことはすべて頭に入れろ。しかし、なるほど、試験か。考えておく」
「いや、いらないし!」
異世界に来てまで試験とかやっていられないし。どんなにわたしがやめてほしいと主張してもサディアスは心に決めたらしかった。




