第2話『光の先に』
光は指で触れると跡形もなく消えていっちゃう。でも、次の光が先に見えるから、まだ森の奥に続いているのがわかる。
森の道は岩やなんかで凹凸が激しくて、ローファーだと歩きにくいんだけど、両手を地面について登る(この体勢は少し恥ずかしい)。きつい坂を越えたところで光は途切れてしまった。
「あれ?」
そこは木々が生えていなくて、開けた場所になっていた。様々な色をした花たちが風に揺れていた。
野うさぎがぴょこっと顔を出してどこかへ行ってしまう。わ、野うさぎ可愛い。不思議の国のアリスみたいにうさぎを追いかけたら、おもしろい場所に連れていってもらえるかも。
楽しくなって花畑に飛び出したら、うさぎが消えた方向に白い毛並みを見つけた。
きらきらと光が注いだ場所に白い馬が休んでいた。足を折り、本当に体を休ませているみたい。栗色の馬は見たことがあるけど、白い馬なんてはじめて見た。
しかも、雪のように白い馬っているんだ。綺麗としか言えない。
近づいてもいいかな。逃げたりしない? ちょっと恐る恐る近づいてみる。音は立てないように慎重に。
「あ」
髪の毛を荒々しく乱すような強い風が吹いた。
声を出したせいなのか、白馬が立ち上がった。そのまま逃げ出しちゃうのかと残念に思ったら、白馬はおとなしくしてた。長いまつ毛に囲まれたつぶらな瞳がこっちを見るの。
「えっと」
言葉なんてわからないはずなのに、何を言ったらいいか考えるなんておかしいかな?
白馬はこちらに近寄ってくるなり、わたしの手に顔を寄せてきた。もしかして触ってもいいの?
毛並みを確かめるように手で触れると、白馬は目を細めた。心を許してくれているのかもしれない。なで回したくなるくらいの可愛さに、思わず、長い首に抱きついてしまった。