第15話『お姫様』
メイクをしてもらって、腫れぼったい顔が少しはマシになった。鏡を見ても気にならない程度にはなったと思う。
髪の毛もいい感じ。黒くて野暮ったい髪の毛の先をくるくるにされた。それだけでも女の子とすれば自信が出るし、外に出かけたくなってしまう。
まあ、神子というものになるらしいから無理なんだろうけど。用意されたふかふかのひとりがけの椅子に座っていたら、クラウスさんが迎えにやってきた。
クラウスさんの髪の毛はオールバックになっていた。他にも首もとまでしっかり止められたボタン。腕に入った金色の紋章。白い手袋。もしかして騎士さん用の制服かもしれない。すごく格好いい。
わたしの視線に気づいたらしいクラウスさんは、ささやかに口元を上げた。
「ミヤコ様」
「な、何?」
じーっと見られているんだけど、もしかしてあまりに変わりすぎたから、似合わないとか、変だった? 慌てて自分の姿を見下ろす。どこが変なのか、わからない。
それに考えてみると、クラウスさんはそう感じても口に出さない人だと思う。きっと、そう。
「参りましょうか」
やっぱり、変でも言わないでいてくれる。ここにいるのがニーナさんなら、ぼろくそに言われちゃうんだろうな。クラウスさんはにこやかに手を差し出してくる。
そしてこれは、手を置けということなのかな。どうしよう。とにかく手を差し出したままにさせるのは気の毒で、わたしは恐る恐る手を重ねた。クラウスさんは優しく握ってくれる。そっと自分の側に引いて、わたしが椅子から立ち上がるのを助けてくれた。
何だか、レディって感じ? 外人の人は自然に気配りができるんだ。15歳の小娘でも同じ。自分がお姫様になったかのような錯覚をしてしまいそうだった。




