表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白馬と姫  作者: カーネーション


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/144

第129話『王の杖』

 レーコさんとともにやってきたのは、牢屋に繋がると思われる地下階段の前だった。やっぱり、牢屋というだけあって、囚人を監視するための看守もいる。階段を降りる前にさっそく彼らに出くわした。


「ここより先は、立ち入りを禁止されている」


 歓迎されないだろうなとは、何となく勘づいていた。簡単には入れさせてくれないみたいだし、どうしようかと、レーコさんに目を向ける。そうしたら、レーコさんはそっとさりげなく王の杖を掲げた。まるで手を挙げるくらいの気軽な仕草なのに、その握られているものが問題なんだと思う。


「お、王の杖……」


 看守の人は口を閉ざすこともできずに、可哀想なくらい震えている。こちらが心配になってしまうけど。


「わたしは前国王の妃のレーコ・ベルホルンです。ここにいるジュリアとサディアスを返してもらいます」


 これがとどめとなって、看守の人は「れ、レーコ様」とふらつきながら、道を開けてくれた。騒ぎを聞きつけたのか、現れた他の看守たちも横にはけてくれる。そのうちのひとりにレーコさんが「鍵を開けてね」と言えば、おずおずと前に進み出た。


 看守の人に案内されて、地下の階段を降りていく。照らす明かりは、等間隔に設置された燭台だけでは頼りない。サディアスの部屋じゃあるまいし、牢屋らしくこんな暗い場所になくてもいいと思うけど。


 そのため、足元をちゃんと見ておかないと、もつれて転けてしまいそうだ。転けたら前を歩くレーコさんに迷惑がかかるから、気をつけなきゃならない。


 階段が終わり、明かりが強くなると、格子で塞がれた小部屋がいくつも見えた。このなかにジュリアさんとサディアスがいる。そう思うと歩く足も速くなる。


 そして、通路を歩き出して2つ目の部屋の格子に、両手がかかった。格子の間に顔をつき出してきたのは、ジュリアさんだった。


「ジュリア」


 レーコさんは呟いたあと、看守の人に目線を向ける。多くを語らずに命令できるのが彼女だ。


 看守の人の手によって鍵を回され、格子の扉が開かれた。自由になったジュリアさんは、通路に歩き出た。解かれた金色の長い髪の毛、少しこけた様子の頬に痛々しさを感じる。でも、わたしなんかの心を救うみたいに優しくほほえんでくれた。


「レーコ様、ミヤコ様も、ご無事で何よりです」


 ジュリアさんはジュリアさんらしく、自分のことより、まず、わたしたちのことを考えてくれる。


「ジュリア、迷惑かけちゃってごめん」


 レーコさんが頭を下げると、「迷惑なんて」とジュリアさんは首を横に振る。彼女はレーコさんのためにならどんなこともする。きっと、迷惑なんてひとつも思っていないはずだ。


「ちゃんと全部、終わったから」


「終わりましたか」


 ふたりはにっこりと笑い合う。このふたりには会話なんてなくても、言いたいことがわかるんだろう。わたしひとりが置いてきぼりにされた感じがあるけど、重ねてきた日々が違うし、仕方ないかと思うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ