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白馬と姫  作者: カーネーション


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第109話『停留所で』

 街から少し外れたところにある馬車の停留所まではすんなりと行けた。お城行きの豪華な荷馬車の前には見張りがひとり立たされている。その人は目元以外を兜で隠していて、どう見ても城に仕える兵士のようだった。


 わたしたちは待機中の馬車を影にして身を潜めていた。


「どうするの?」声を小さくして隣の長身に聞いてみる。


「さあな」


「さあなじゃないでしょ!」


「ミヤコ様、わたしにおまかせください」


 そう言って立ち上がったジュリアさん。でも、わたしは見逃せない。その手には物騒な刃物があった! カルウイックで言っていたジュリアさんの「協力」って!


「ジュリアさんは、な、何をするつもりですか?」


「馬車を強奪いたそうかと」


「ダメです! そんなものどこから出したのですか?」


 ジュリアさんは不思議そうに首を傾げた。


「女のひとり旅には護身用の短剣は必須でしょう?」


 確かに女のひとり旅は危険かもしれないけど、それとこれとは話が違う。


「とにかく、人を傷つけるのはダメです!」


「そうですか」


 どうにか納得してくれてジュリアさんは短剣を収めた。強行突破がダメとなれば、選択はひとつしかない。ここは見張りの人をうまく誘きだして、荷馬車へと近づくのだ。でも、実際、どうやれば?


「おい、こちらに向かって来る」


 えっ? サディアスの声に驚いて、彼の視線の先をたどったら、見張りの人がこちらに向かってくるところだった。もしかして、わたしたちの存在がバレた?


 嫌な予感は大当たりしたみたいで、見張りの人の足はわたしたちの目の前でぴったり止まった。


「お前たち、顔を上げろ」


 うつむいてばかりはいられない。抵抗したらもっと面倒なことになってしまう気がするし、ゆっくりと顔を上げる。まだ、何にも実行していないのに捕まっちゃうのかな。そう不安に思っていたら、兜の目だしから意外にも優しい瞳を見つけた。笑い声も聞こえてくる。


「というのは冗談です」


 わたしは驚きのあまり声を上げそうになった。だって、この笑い方と声は知っている。まさかこんなところで会えるなんて思わなかった。わたしを追っ手からかばってくれた。優しくほほえんで、何度も不安を拭ってくれたのだ。

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