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親友の華麗なるフラグ回避


 朔くんとの間にほのぼのとした空気が漂ったのも束の間。こんなに心強い味方がいるなんて、その子は本当に幸運だなぁなんて何とは無しに思っていた私はあることに気付いてしまった。


 これ、ミカ詰んでね?と。


 朔くんが出会った子が私たち同様に転生者であるということはほぼ間違いないだろう。それは彼女の言葉から分かる。…その子が早すぎる中二病患者だったら話は別だけど、さすがにその可能性は低いと思う。というよりそんな幼女がいたら嫌だ。

 であれば、記憶持ちの転生者である彼女は何者か。ヒロインもしくは他のライバルキャラか、はたまたモブか。それは気になることではあるけど、今判断するには推理材料がなさすぎるし、何より重要なのはそこじゃない。

 問題は、正体が何であれその少女は高確率でミカではないということだ。もし、件の少女がミカだったら、この前会った時にその話を聞いてる筈だ。だけどミカは朔くんへの熱い想いは語ったけれど、この前の大会以外で会ったことがあるとは言ってなかった。つまり、朔くんの唯一は別の転生者である=ミカ、失恋大決定!となってしまう。


 うわー。出会う前に好きな人が違う人に攻略されてたとか、それ何てバグ。それともNTRを目指せと?……ないわー。


 なんてうっかりゲームっぽく考えてしまったけど、現実逃避はよそう、うん。

 さて、どうやってミカに伝えればいいかな。前世でヒロインとしてプレイしている時でさえ、朔くんがライバルキャラとくっついたら怒り悲しんでいたのに、この世界が現実となった今、自分から行動を起こそうとしたら既に失恋していたなんて知ったら、ミカは一体どうなってしまのか。想像するだけで怖い。

 とにかく、先ずはどう話すかを決めるためにも、もっと朔くんからその子のことを聞く必要がある。そう判断して、私はさり気なく、それにしてもと話を続けた。


「さくさんにそれほど想われるなんて羨ましいですね。もう少しどんな子か聞いてもよろしいでしょうか?」

「…そう、ですね。彼女は最初の出会いこそ泣いていたけれど、例え一人であっても大丈夫だと思えるようなしっかりとした人間になりたいと、そう言える強さを持っている子です。僕はまだ彼女の事情を知りませんが、それでも、嘆くだけでなく立ち向かおうと頑張る彼女を選んだのはやっぱり間違いじゃなかったと思うんです」

「その女の子とはよく会ってるんですか?」

「いえ、出会ってから二週間ですが先日会ったのが4回目ですね。ただ、実は彼女は今日から僕の家の道場に通うので、これまでよりは会う機会が増えるんです」

「あ、そうなんですね……って、はい?」


 今なんと?今日から朔くんと一緒の道場に通う転生者なんて、そんなのミカ以外に誰がいるの?え、私の考え、間違ってた?それともミカじゃない転生者が偶然同じタイミングで入ってくるの?だとしたらどれだけレアケなのよ。


「どうかしましたか?かおるさん」

「あの、私の知り合いも今日からこちらの道場に通うことになっているんですが…今日入る子って多いんですか?」


 いやいや落ち着こう、私。どんなに確率が低くたって起こりうることはあるじゃない。そうだ。まれによくある。


「いえ。今日入る予定の子は一人だと父からは聞いていますが」


 わー。どう考えても朔くんの唯一はミカですね。ありがとうございます。

 …もうホンっト、あの子何やってんのぉぉぉ。真面目に考察してた私が馬鹿みたいじゃない。ていうか穴があったら入りたい、寧ろ掘り進めたい。

 朔くんにはもう好きな人がいる。それはミカじゃない(キリッとか馬鹿じゃないの何なの死ぬの。恥ずかしすぎるわ、自分。


「かおるさんは、あんずさんを知っているんですか?」

「え?あ、はい」


 それにしてもおかしいな。大会以前に朔くんと会っていたなんて話、ミカだったら絶対嬉々として報告しそうなのに。朔くんの大切な存在になったっていうのなら尚更だ。だからこそ私だって、朔くんの「あの子」はミカじゃないって結論に達したわけだし。

 何か言えない理由があった?だとしたらそれは何故?



「さくくん、かおるちゃん。こんにちは。二人が一緒だと聞いたんだけど一体何の話を、」

「あんずちゃん!数日ぶりね、元気そうで何より。それはそうと聞きたいことがあるの。今時間いいかしら?いいわよね。じゃあ、さくさん、少し失礼しますね」

「え、かおるちゃん!?」



 まあ、考えても分からないなら聞くのが一番よね。

 ということで、母屋に通じる道から杏がやってくるのが目に入った私は、すぐさま彼女の傍まで行きその


腕を掴んで、また母屋の方へと戻っていった。背後では朔くんが慌てたように杏と私の名前を呼んでいたけど、一回振り向いて、来るんじゃねぇよオーラを出すと駆け寄ろうとしていた足を止めてくれた。うんうん、空気の読める子は素敵だとお姉さんは思います。



 よし。それじゃあ腹ぁ括って話そうじゃないか、親友よ。




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