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蝶の羽ばたき≒変態の今後の動向


 ちょうどいいからと、ミカはこの世界について自身が覚えていることも語ってくれた。その際、とてもいい笑顔で「私の将来の旦那様に関して本格的に喋るとなると夜が明けるかもしれないけどいいかしら」と何とも歪みない言葉をかけられたが、それは丁重にお断りした。美少女がこてんと首を傾げるという何とも愛らしい仕草に危うく頷きそうになったが、寸でのところで思いとどまった。惑われるな、これは天使じゃない変態という名のハンターだ。

 現に断った瞬間、すごい顔で舌打ちされたし。いやだから、そのお綺麗な顔でそんなことしないで。見てるこっちが切なくなってくる。

 それにしてもミカだった時と同じようなこと言われてるのにぐらつきそうになるなんてさすが美少女、パネェ。



「まあいいわ。どうせ私が覚えてる朔くんの情報なんて、今となってはほぼ使いものにならないんだから」

「え、どういうこと?」

「私が知っている彼は何も影響がなくこのまま高校生まで成長した、つまりはゲーム通りの朔くんってこと。だけど、ゲームそのままの朔くんになるなんて、もう殆ど不可能でしょう?婚約者だったあなたとの関係も変わってくるし、何よりゲームではあまり接点がなかった私が同じ道場に通う仲になる。口に出してみるとそれだけってなるけど、実際その影響力がどれほどのものになるかなんて分からない。所謂バタフライエフェクトってやつね。とはいえ、ゲームと全然変わらない朔くんになる可能性もあるから、こればっかりは読めないわけだけど。…まあどんな朔くんになったって私は変わらず愛し続けるけどね!そりゃあ全く面影ない、ほとんど別人じゃないかゴラァな彼だったらちょっと迷ってただろうけど、一昨日見た限りはそんなこともなさそうだし。あ、でもこれはまだ私たちがあまり干渉してないから当然のことか。けどやっぱり相も変わらずかっこよくてでもその中に可愛さもあって、将来が楽しみな美少年にお姉さんはwktkですっ」

「待って!お願いだから色々待って!」


 すごく真面目な話だったのにどうしていきなりとんでもない方向に脱線してしまうのかとか、その素晴らしい肺活量はやっぱり遺伝なのかとか、歪みなさ過ぎてもう何だか恐怖すら覚えるレベルの愛の注ぎっぷりですねとかツッコミどころは多々あるけど、それより何より気になったのは。


「同じ道場に通うって何!?」


 小南杏からは想像もつかない、その行動である。



 ゲームの杏は、舞台俳優の父親と、数々のドラマや映画に出ては視聴率女王と持て囃される母親をもち、自身も幼い頃からモデルとして活躍していたまさしく芸能界のサラブレッドだった。それ故か、汗臭いことは嫌いで、体育だってろくに出ずに教師に注意されるというイベントがあった程だ。その杏がよりによって剣道って…想像すらできない。


「もともと剣道やってみたかったっていうのもあるけど、何よりちっちゃい朔ちゃんを間近に見れるチャンスを逃したくなかったんだよね。道場見学とか大会に応援に行くだけでもいいかなとも思ったんだけど、それだとやっぱり距離あるし見てるだけになっちゃうじゃない?一緒に写真に写るチャンスもそうないだろうし。その点、同じ道場に通えば仲良くなるきっかけにもなるし話す機会だってたくさんできそうだし、エンジェル朔ちゃんが素敵武道系男子朔くんに成長するのをすぐ近くで見守れるし、まさに良いこと尽くし!ふふふふふ、鍛錬に励む朔ちゃんを余すことなく心のフィルムに収めていくわ。シャッターチャンスはいつでも我が手に!」

「…わー」


 どうしよう。親友が思った以上に行動力ある積極的ストーカーだった。

 朔くん逃げて超逃げて!!




「それにしてもよくお父さんたち許したね。確か杏って過保護なくらい溺愛されてなかったっけ?」

「ああそれね。父親が武士役の舞台見に行って、お父さんすっごくかっこよかった、私もああいう風になりたいってお願いしたの。まあそれでも最初は渋ってたんだけど、涙見せたら一ころよ。やっぱ子供の涙は最強ね」

「それ嬉々として言うことじゃないから!……小南のおじさんとおばさん、可哀想に」


 可愛い娘の中身がこんなのになっちゃうなんて。心から同情します。



 とはいっても、ゲーム通りになればそれはそれで問題ある子になっちゃうんだけど。

 一通りイベントをこなして、秋白朔の好感度がある程度まで上がらないとライバルキャラとして登場しない薫と違って、杏はチャラ男の好感度が友好になるとイベントをこなしてなくても必ず出てくるのだ。まだあくまで顔見知りよりはマシレベル(というか廊下ですれ違ったら挨拶する程度)なのに、それで牽制って早すぎるだろう。

 「彼は女の子には誰でも優しいんだから調子にのらないでよね」って、ただ今日も良い天気だねそうだねなんて会話のどこに調子にのる様子があると!? いやそれは一例だから、もうすぐテスト始まるね嫌になるねとかもあったけど、それだって他愛ない会話だよね。寧ろそこには優しさも何もないよね。

 なのに、そんな会話ですらも許さないのが杏クオリティ。他のライバルキャラと違って明らかに登場も早ければその敵対心っぷりも群を抜いていることから、彼女はゲームのファンの間では「ぞっこんちゃん」と呼ばれていた。…今時、ぞっこんとかほとんど耳にしないなんて野暮なツッコミはなしだ。


「ん?…ああ、成程」

「何?どうかした?」

「いやちょっと納得しただけ」


 それを向けられる対象も、向ける想いの形も異なるものになったけど、その想いの深さは根本的に変わってないんだなと、不思議そうにこちらを見つめる杏を見て、ふと思った。



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