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変態がマトモだとそれだけで何故かシリアスになる不思議


 2日後、私とミカは、待ち合わせ場所であるお互いの家の丁度中間地点にある公園で再会して、彼女の現在の家へ向かった。話す内容が内容だけに外という選択肢はなかったし、私よりも彼女の家の方が人の出入りが少ないため内緒話に適しているという理由から、今日の約束をした際に私から提案していたのだ。今日会うことを含め彼女が覚えてくれているかは甚だ不安だったけど、どうやら最低限の理性は持ち合わせていたらしい。

 良かった。ずっと恋い焦がれていた秋白朔と同じ世界にいるということで、脳内お花畑=理性?何それおいしいの、そんなことより今このときを思いのままに堪能しようぜ!なパッション溢れる人間になってたらどうしようかと思った。


「次はぜひともかおるちゃんのうちに遊びに行きたいわね。純和風ってあこがれるわ」


 いや寧ろ、この前の残念さが嘘のように、今日の彼女はマトモだった。一瞬、何だこの前のは私の白昼夢かと疑ったほどだ。それくらい、言動が普通の杏はきらきらとまぶしいくらいの美少女っぷりである。


「えー、そうかなぁ。あんずちゃんの家の方がメルヘンで可愛くていいと思うけど」


 家に着いてお手伝いさんに部屋に案内してもらいながら、ほぅとため息を零す。

 小南の家は、まさに女の子が一度は憧れるだろう理想の家だ。庭園には、季節の花々が咲き乱れているし、西洋風の豪奢な建物はまさにお城といってもいいくらい。外だけでなく中だって、螺旋階段やシャンデリアなど、私がエリだった頃から強く惹かれてやまなかったものばかりだ。


「ふぅん。…私たち、一度お泊り交換会した方がいいかもね」


 自室に入りつつ、にこりと笑う彼女はまさに絵画から出て来たかの如く輝いていた。




 心底悲しいことに、それもお手伝いさんがいなくなるまでのことだったけど。

 ……うん、知ってた。だけどごめん。分かってたけどちょっとショックすぎて涙がちょちょぎれるわ。




「はぁ?あんた馬鹿ァ。大して思い入れもなければ関係もないキャラを救おうだなんて傲慢にも程があるわよ」

「…あー、ぶっちゃけそれ言いたかっただけだよね」

「なぜ分かったし」


 溢れそうな涙を堪えて、とりあえず情報交換はするべきだろうと私が覚えていることと、そして名前は思い出せないけれどこのゲーム最大の被害者といってもいいチャラ男を救いたいと言った私への返答がこれだ。正直どういう反応をすべきかすごく迷った。

 が、結果素直に呆れつつツッコめば、彼女はがーんと効果音がつきそうな表情をした。



「いや、でも冗談は置いておいてさ、本当に単なる同情で人を救おうと思っているならそれは傲慢だよ。エリはまだ実感ないだろうけど、この世界は夢でも何でもないただの現実だもの」

「え?」

「この世界で1カ月近く過ごした私が保障する。だって、この1カ月ずっと記憶が途切れることなく続いてるんだよ?夢が覚めてミカに戻ることもなかったんだよ?どう考えたって、これは夢でもなんでもなく、私たちはあの世界に転生したんだと思う。でもだからこそ、ゲーム感覚で人を救えるだなんて思わない方がいい。そんなの、自分も相手も傷つけるだけだもの」


 場を繕うようにこほんと咳をすると、いきなり今までのゆるっとした表情が嘘のように、彼女はきりっと真面目に言った。これが他愛ない会話だったなら、ゆるゆるなキャラがいきなり真面目になるなんて何なの、ギャップ萌え狙ってるのキュン死にさせる気なのとつっこむところだけど、さすがにこんな空気でそれを言う度胸は私にはない。というか、ミカが何より私自身を案じているのが分かって、そういう風に茶化す気にはならなかった。

 だから私は彼女と同じ位真摯であれと思いながら答えた。


「分かってるよ。私だって今自分が高校生だったならあんなでっかいトラウマ持ち男助けようだなんて思わない。自分が助けられる筈がないって知ってるもの。そんな勇気、私は持ってない」

「だったらっ」

「だけど!私たちは今5歳で、あの子がトラウマ持ちになる前かもしれないんだよ!?もしかしたら助けられるかもしれない、そんな人が近くにいるのに、それを知っているのに、放っておくなんて私は出来ないよ!!」

「っ」




 今なお、ハッキリと覚えている。全てを知ったヒロインに、彼は言ったのだ。


「分かってる、本当に醜いのは俺だってこと。最悪だよな、女は汚いと言うその裏で、その女の体温がないと眠れないなんて!最低だ、分かってる、そんな自分が俺は大嫌いだ、だから俺は醜いんだ、俺なんていなくなればいんだ。あの女に汚された俺は、きっと誰よりも生きる価値がないっ。……だけどっ、何で俺なんだよ。何で俺だったんだよ!ちくしょう、ちくしょうっ」


 名前も覚えてないのに。

 他にどういったイベントがあるかも碌に思い出せないのに。

 それでも私は、彼のその慟哭が忘れられなかった。ぼろぼろと幼子のように涙流す彼が、忘れられなかったんだ。




「ごめん、ミカ。でもやっぱり私は無理だよ。彼が今苦しんでいるかもしれないのに、それを無視することなんてできない。可能ならば、彼を助けたい。彼に、年相応の幸せを与えたいよ!」

「……全く。どっちが肩入れしてるのよ、ホント救えない馬鹿だわ。あんたも。…私もっ」


 そうして。

 深く、深くため息をついて、ミカは、私が覚えている範囲でいいならと彼のことを語ってくれた。


 それは、彼を助けることに一歩近づいたと確信できるぐらい、有益な情報だった。




 あ、ミカさん、秋白朔以外のこともちゃんと覚えてたんですね。とか思ったのは内緒である。…サーセン。




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