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親友による攻略キャラの設定開示


 夏園くんと出会って半月が過ぎた頃、私は報告も兼ねて、久しぶりに杏に会いに行くことにした。その間、杏は杏で稽古がない日も道場に行っては朔くんを応援して、彼との仲を深めていたらしい。その影響もあってか、朔くんのやる気は以前より更に増したようだと、彼の母親がうちに来た時に嬉しそうに私に教えてくれた。杏とは電話で少し話した程度であれ以来会っていなかったけど、順調にいっているようで何よりだ。

 だからって、前のように朔くんの話を延々とされると肝心の夏園くんの話ができないので、今日の約束をする際、杏には惚気話は程ほどにするように言ってある。正直、全くない方が好ましいけれど、それは無理だろうと妥協した。杏も一応、了承してくれたのでそれを信じたい。




「いらっしゃい、かおるちゃん。久しぶりね」

「こんにちは、あんずちゃん」


 今日も、話し合いの場は杏の家だ。何でも、父親は地方で舞台の仕事、母親は映画の撮影だとかで、ここ最近はお手伝いさんと2人のことが多いらしい。職業柄、両親とも家にいることが多いうちとは環境が大分違う。とはいえ、子煩悩な杏の両親は、会えないならと電話を頻繁にしてくるので、それはそれで大変だと杏は言っていたけど。

 

「それで?赤羽くんとはどうなの?」


 部屋まで案内してくれたお手伝いさんが、お菓子を持ってきますねと席を外すと即座に、杏は好奇心で目を輝かせながら尋ねてきた。小声なのは、いつまたお手伝いさんが部屋に来てもいいようにだろう。


「最初に比べれば大分仲良くなったと思うよ。誰かと一緒にいることにも慣れてきたみたいだし。そろそろ杏も会っても大丈夫じゃないかな」

「うーん、それはどうだろう。赤羽くんには、私のこと言ってあるの?」

「いや、まだ。明日会った時に、それとなく言ってみようかなとは考えてたけど」


 夏園くんと仲良くなるにあたって、私と杏で決めていたことがある。それが、まずは私1人が彼と会うということだ。人に慣れていない夏園くんに、いきなり杏と2人で会いに行っても、向こうは慌てて混乱するだろうし、最悪逃げられる可能性もある。まあ、それは私1人が行った時だって十分あり得たことではある(というよりも実際あり得た)んだけど、2人の時よりも1人で会いに行った方が、その確率が低いと私たちは考えたわけだ。

 一時は失敗したかと冷や冷やしたけど、何とか無事仲良くなれたことだし、そろそろ次の作戦『最終目標は30人くらい?とりあえず友達を増やそう!』を実行していい時機だ。全く知らない子と仲良くなるのはさすがに難しいだろうから、初めは私の友達として杏や朔くんを紹介するつもりだ。


「まだちょっと早くない?もうちょっと時間かけた方がいいんじゃないかな」

「え、そう?でも、私一人よりも、杏たちを交えてみんなで遊んだ方が楽しいと思うんだけど」

「いずれ会うことになるんだし、そんなに急がなくてもいいでしょ。今は何よりも、赤羽くんの信頼を得ることが大事なんだし」

「んー、分かった」


 私は大丈夫だと思ったけど、杏がそう言うならもう少ししてから次の作戦にしよう、と頷く。それを見た杏が、何かを言おうと口を開けたその時、お手伝いさんがジュースとお菓子を持って戻ってきたため、話は一旦中断となった。




 お手伝いさんのお手製だというタルトは美味しくて、それを告げれば彼女は破顔一笑した後、何かあったらお呼び下さいと部屋を出て行った。彼女がいなくなってからも、私たちは特に話すことなく、タルトとジュースを堪能してまったりしていた。

 杏が、そういえばと、話し始めたのは、食べ終わって少しうとうとし始めた時だった。


「私、このゲームの設定資料集の内容、ちょっと思い出したんだけどさ」

「はい?資料集まで買ってたの?」

「うん」


 当然でしょうとばかりに肯定されて、思わず脱力するも、杏はそんな私に気付くことなく先を続けた。


「何度も読んだのは朔くんのところだけど、一応全ページ目は通したのよ。朔くんの些細な情報があるかもしれないしね。で、赤羽くんの設定で、見た瞬間にうわぁって引いたのがあって、それどんな内容だったっけってここ数日考えてたんだけど、やっと思い出したわ」

「引くってことは、夏園くんの義理の母親のこと、よね?」

「当たり。そもそも、いくら夫が仕事人間で息子のことにほぼ関心がないといっても、普通は継子に手を出さないでしょ。お金は山ほどあるんだから、裏ルートでもなんでも使って後腐れない子を買った方がいい。現に、赤羽くんに手を出すまでは贔屓の店があったって書いてあったしね。だけど、頻繁に利用しすぎたとかで噂が立っちゃって、週刊誌の記者に張り込まれたりもしたみたい。そうなると困るのは夫である赤羽代議士。ただでさえ愛人の子を引き取ったばかりだし、これ以上のスキャンダルは避けたかったんでしょうね。暫くは大人しくするようにきつく言ったそうよ。そのせいで矛先が息子にいくとはさすがに思ってもいなかったでしょうけど」


 うわぁ。何それひどい。さすがに、設定資料集に載ってることまで知らなかった私は、本妻に関しての設定にドン引きした。ていうか、本妻が色々ぶっとびすぎてワロエナイ。



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