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第1話
僕は案山子。
50メートル四方の田んぼの真ん中に突き立てられて動けない。
後ろも向けない僕の世界は目の前の、駅へと続く一本道だけ。
朝の通勤、通学時間帯はたくさんの人が浴へと急ぐ。
その道を二人の子供が歩いている。
先に歩くのは男の子。
後を追いかけるのが女の子。
どうやら兄弟のようだ。
女の子はお兄ちゃんに追い付こうと速歩き。
だけど歩幅の大きなお兄ちゃんには追い付かない。
でも不思議と離れもしない。
たまに後ろを振り返るお兄ちゃんに妹は気付かない。
時間がたって夕暮れ前。
散歩をしている人も、帰路につく人もいない時間。
あの兄妹が歩いてる。
朝と同じ、前を歩くお兄ちゃんと後を追いかける妹。
お兄ちゃんが後ろを見ると妹が道路に座ってる。
黙ってランドセルを前にまわすと妹をおんぶする。
妹は安心して眠ってしまったみたい。
明日は歩いて家まで帰れるかな?